
低価格が売りの屋台や横丁風の居酒屋が増えているが、ここでも多くの中国産が使用されている
さらにコロナ禍での生活様式の変化で人気が高まった宅配専門の料理店、ゴーストキッチンでも中国産食材が大活躍している。ただ、その目的は、コスト削減だけではないようだ。都内でゴーストキッチンを複数店舗運営している、40代の経営者の男性が明かす。
「ウチも含め、多くのゴーストキッチンは家庭用のキッチンに毛が生えた程度の設備で営業しています。そうした限られた設備で、通常の飲食店のようにすべて一から作っていたのでは注文を捌けないので、カット野菜や剥き身の冷凍シーフードなどが重宝するんです。下処理済みの食材で、コストが見合うものは、中国産しか選択肢がありません」
中国産の下処理済み食材は、一般の飲食店でも利用機会が増えているという。静岡県内で小料理店を営む60代男性の話。
「飲食店では今、コロナ禍で店を閉めている間にバイトが辞めちゃって、いざ店を再開しようにも人手が足りない。そうなると、調理工程を削減せざるを得ない。ウチではゴボウのささがきとか里芋の皮剥きとかは、これまでバイトの仕事だったんだけど、辞めちゃったんで、処理済みのものを使っています。悲しいことに、常連の人もあまり気づきませんよ……」
毒餃子事件以降のチャイナフリーの動きのなか、国産回帰とともに叫ばれたのが輸入食品のポストチャイナ探しだ。ところが我が国の輸入食料品に占める中国産の割合は、ここ10年ほどほぼ横ばい状態。脱中国ができない事情に関し、飲食業界向けコンサルティング業務を行うヴィガーコーポレーション代表の成田良爾氏は言う。
「国土が広いために幅広い食材が手に入り、さらに地理的にも日本から至近という中国は、食品の輸入先としてはもってこい。また、モノにもよりますが、日本の飲食店で中国産が利用されることが多いタマネギやニンニク、ネギ、カボチャ、イカ、ハマグリなどは、日本での品質や規格に合致するような商品を別の国で見つけようにも難しい。結果的に中国しかないという現状があります」
今後、中国産食品への依存度がますます高まる中、流通アナリストの中井彰人氏はこう指摘する。
「食品の中国産依存の背景には、価格だけの問題ではなく、国産品だけではもはやモノが揃わないという現実がある。日本の農業や水産業は、高齢化や後継者不足などの構造的問題を抱えており、生産能力はどんどんシュリンクしています。食品業界や小売業界からすれば、10年、20年先まで安定供給できる保証がない国産品だけに頼るのはリスクです。種々の規制を緩和して第一次産業への業界外からの参入を容易にするなど、構造を変えていかなければ、日本の食料自給率はさらに下がります」