Vol.22-1 サブカル夫が妻と離婚した悲しすぎる理由。“理想的な文化系夫婦”だったのに
【ぼくたちの離婚 Vol.22 色褪せる花束 前編】
書籍化・コミック化も果たした人気ルポ連載「ぼくたちの離婚」。これまであまり語られてこなかった「男性側の視点から見た離婚」をライターの稲田豊史さんが取材しました。
※以下、稲田さんの寄稿。
令和2年の司法統計によると、離婚理由の1位は「性格の不一致」だという。実は、これは20年前から変わっていない。性格の相性は結婚前からわかっているはずなのに、なぜ、結婚後にその良し悪しが変わるのか。付き合っていた頃から「理想的な文化系カップル」だった、フリーライタのー山野辺武志さん(仮名/36歳)とその妻のケースを見てみよう。

カルチャー系の署名記事やインタビューなどを多く手掛ける山野辺武志さんは5年前、31歳の時に離婚した。当時、結婚7年目。子供はいない。
「妻の美代(仮名)は、僕が新卒で入社した都内にある大手印刷会社の同期でした。早稲田大学卒の、いわゆるワセジョ。写真展や美術展めぐりが趣味で、広告デザインやミニシアター映画や純文学にも通じている、筋金入りの文化系女子です」
山野辺さんもいわゆる文化系男子だが、方向性が違うという。
「僕はもっと泥臭いというか……。現代美術や文学も一応カバーはしていましたが、軸足はもっとサブカル寄り。映画もどちらかといえばエンタメ寄りで、アニメやマンガの評論を読み漁ったり、若手思想家や論客をフォローしたり。そんな感じです」
人当たりがよく、穏やかで礼儀正しいメガネ男子。華奢で小綺麗で優しそう。それが山野辺さんの第一印象だ。「のび太の最上級グレード」と言えば伝わるだろうか。
「本当は出版社に行きたかったんですけど、就活ではどこもダメで。仕方なく紙の出版物に関われそうな印刷会社に入社したんです。美代も同じでした」
「編集者になりたかったが、なれなかった」ふたりはすぐに意気投合。交際がはじまった。写真展や美術展を回ってカフェで感想を言いあったり、お互いに気に入った映画や小説を教えあったり。そんな日々が続いた。
2年あまり交際し、結婚。ふたりはまだ若く25歳。理想的な文化系カップルだ。なのに、なぜ離婚してしまったのか。
「僕の底の浅さがバレたんです」
