本当の問題は、高校を卒業して就職した地元のスーパーで起こりました。
高校の推薦もあり無事に入ることができた会社でしたが、そこには高校の同級生がいて、安井さんについて「
他校の不良をやっつけたヤンキーだった」「
すぐ暴力を振るうから誰も近づけなかった」など、根も葉もない噂を流したのです。

「そんな話が出ていると同僚から聞かされて必死に否定したのですが、空手で段位を取り大会でも優勝していることや大きな体のせいで、『やろうと思えばできるもんね』と返されたのが悲しかったです。上司にも噂はまったくの嘘だと説明しましたが、そんなことを同級生に言われる人間というだけでマイナスですよね……」
入社して半年も経たないうちに孤立してしまった安井さん。
それでもめげず毎日出社して仕事をがんばったのは、お母さんへの恩があったから。
「何よりも、
ここまで育ててくれたお母さんに申し訳なかったです。空手を続けさせてくれて生活も支えてくれて、これからは私がお母さんを助ける番だと思っていました」
周りのおかしな目は気にしても仕方ないと割り切り、それよりも自分の業務をミスなくこなすことに日々集中していたそうです。
空手で学んだ心の持ち方は、このときも安井さんの支えでした。
そんな安井さんを遠巻きに見る人のなかに、ある男性がいました。