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男同士の官能ほとばしるキスに釘付け。BLドラマ『飴色パラドックス』に漂う“匂い“

BLの世界観に感じる“匂い”

「今は夏 そばにあなたの匂い」  1993年にリリースされた大橋純子のヒット曲「たそがれマイ・ラブ」の歌い出しである。  阿久悠の作詞と筒美京平による作曲という最強の布陣が組まれたこのスイート・ナンバー。夏の日々に火照る自分のすぐ近くに好きな相手がいる。ただそれだけなのに、歌い出しから曲全体の情景が一発で浮かぶ。今という時間の刹那をたそがれゆくものとして切り取る阿久悠の歌詞には絶妙な余白があるから、リスナーの自由な想像力を掻き立てる。曲で歌われる「彼女から彼」への視線を「彼から彼」へ書き換えて聴いてみると、あら不思議……。  ああ、そうそう。この感覚だ。BLの世界観とは、まさに「そばにいるあなたの匂い」を感じるもの。この「匂い」が強烈なのだ。ものすごいエモーションと熱気があり、男女の関係以上に結びつきが強く、濃厚な、男と男を描いた世界。それが、BLの世界観なんだと、ひとまず筆者は考えている。

不思議な情愛にすり替わる転換

©「飴色パラドックス」製作委員会・MBS 男性同士が恋愛するとはいっても、物語のはじめから好き同士でいるわけではない。ふたりがだんだん惹かれ合っていく距離のドラマは異性間と同じだ。それでよく使われるのが会社の同期という設定。『チェリまほ』では、間抜けで冴えない安達と同期でトップの営業成績を誇る黒沢との関係性が前提にあって、安達の嫉妬(半ば憧れ?)がいつしか慈しみに変化するところに核心があった。「ドラマシャワー」枠で放送中の『飴色パラドックス』でもまた同じような感情のベクトルで“同期”設定が採用されている。  週刊「DASH!」で事件記事を担当する尾上聡(木村慧人)は、担当した記事が巻頭を飾ると喜んでいた矢先、最新号の巻頭が別のスクープで差し替えられてしまう。記事担当は、同期のカメラマン蕪木元治(山中柔太朗)。尾上は、出来る存在である蕪木のことを「とにかくムカつく野郎」といって毛嫌いしている。蕪木が所属する張込み班に異動になると、はじめこそ蕪木の欠点をひとつでも多く見つけようとする。  安達同様に尾上が抱く同期へのこうした嫉妬の感情は、どっこい、いつしか本人にもよくわからない、言葉ではっきりとは説明出来ない情愛にすり替わる。この転換、ほとんどマジックのようなのだけれど、これこそ不思議な匂い漂うBLの世界観に生きる男たちの秀逸で、絶妙、かゆいところに手が届くような心地よさを感じさせる関係性なのであるから、いやはや奥深い! 
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進化するBLドラマの関係性
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©︎「飴色パラドックス」製作委員会・MBS
ドラマシャワー「飴色パラドックス」
MBSほか 毎週木曜25:29~
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