男同士の官能ほとばしるキスに釘付け。BLドラマ『飴色パラドックス』に漂う“匂い“
すご腕の古厩智之監督
考えるほどに、BL的な関係性、その結びつきは不思議なものだが、実は本作の演出を担当する古厩智之監督に聞いてみたら、「遠慮なく、素直に、男女間の恋愛よりストレートに撮れました」という返答をもらった。
さらに、「『俺が嫉妬するなんて』とか『俺があいつを好きに?』とか、延々『愛の話』だけをしていられる。結果、男女とか男男とか全く関係ない『愛の普遍性』を描きやすいのでは」とも。
古厩監督といえば、『ロボコン』(2003年)や『武士道シックスティーン』(2010年)など、そりゃもう青春映画のすご腕職人なんだけれど、『さよならみどりちゃん』(2005年)では、男女の甘熟した蜜の味どろどろ(いや、とろとろ?)、性愛のひとコマを切り取り、こちらもまたすご腕だった。そして本作でもまた官能ほとばしるすご腕の瞬間をいくつも垣間見せている。
進化するBLドラマの関係性
第1話、張込み班の現場初日。走るのが遅い尾上が早々にヘマをしたその夜、行きつけの居酒屋でやけ酒する場面。両手に花状態の蕪木に居合わせる。女の子たちが帰ったところを捕まえ、鼻持ちならない蕪木に我慢ならない尾上が問いただす。すると、いたって冷静沈着な蕪木が、尾上の耳元までさっと口元を寄せる。心の距離を飛び越え、早くも身体と身体の距離がゼロ度寸前。ここからが見逃せなかった!
口元が耳元から離れる瞬間、蕪木のカールした明るい毛先が尾上の黒髪にわずかに絡まる。深夜の官能、ここにあり。ふたりのパラドックスが、官能のスクープに。BILLY LAURENTによる主題歌、R&Bナンバー「Go Sign」が、またふたりのほれたはれたのメイクラブを助長させるんでね、参りました。
決定的だったのは、第3話。白昼堂々、ふたりが編集部内の片隅で唇と唇をそっとさりげなく重ね合わせる。心も身体もその距離、ゼロ度になったこのキス以降、尾上が代議士の秘書に襲われかけた料亭のエレーベーター前やら蕪木の顔半分を赤いライトが照らす車内の密な空間やら、いたるところで官能の瞬間がまたたき、湧き出る。
心と心の襞(ひだ)を絡め合いながら、いつしか溶け合おうとしているこのふたり、加速度的に予想を超えてくる関係性である。このBL的な関係性の先で、BLドラマは、確実に進化する。
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<文/加賀谷健>
©︎「飴色パラドックス」製作委員会・MBS
ドラマシャワー「飴色パラドックス」
MBSほか 毎週木曜25:29~
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