「私は自分を男だとしか思えない」結婚後に告白したトランスジェンダー当事者、夫はどう思っている?
その人単体ではいまいちの評価でも、配偶者が魅力的であるというだけで妙に評価があがることってないだろうか? 私はある。同僚の結婚式で「あんなきれいな人と結婚できるとは」と感心したり、お相手が有名企業に勤めていれば「あの人、実はやり手なんだな」なんて盛り上がったり。そうは言っても私たち夫婦は結婚して10年以上だ。いまさら大きな影響はないだろう。
しかし、それが「性別が男性」あるいは「男性にしか見えない」と思われるとしたら……? それによってパートナーの評価まで変わるのではないかと、私は怖くてたまらない。
夫は、私のセクマイ(※編集注 セクシャルマイノリティの略)を受け入れて結婚したわけではない。私が男性として生きることにしたのは実のところ、ここ数年のことだ。私は長らく、自分をセクマイ当事者とは思えずにいた。
幼稚園のころから自分を男だと感じてはおり、女扱いされることには常に違和感があった。制服もイヤだったし、大きくなる胸を嫌って血だらけになるまでかきむしったり叩いたりもした。私の子ども時分にはまだまだネットは普及していなかったが、性同一性障害や戸籍名の変更方法、性別適合手術について密かに情報収集していた。保守的で厳格な家庭で育ったために、「親にバレたら殺される」と思い口に出すことができなかった。
それ以上に、私自身、自分を当事者と思えない最大の理由があったーー私は女性を好きになれなかったのだ。
「男性が好きでも、性自認が男性」ということが起こりうると気づいたのは、30歳を過ぎたころ、セクシャルマイノリティについての本を読んだのがきっかけだ。考えてみれば、女性を好きでないと性自認が男性にならないとするなら、ゲイ男性の存在は全否定されてしまう。
その矛盾に気づいたことで、私はようやく「自分をどうしても男性としか思えない」と、はっきり受け入れることができた。このとき私はすでに男性と結婚して、男性の実家で義理の両親と同居していた。
考えてみてもらいたい。もし、好きあって結婚した相手の女性が「自分は女性ではない」と言い出したとしたら……?
「話が違う」と言われても、おかしくないと思う。夫や家族は、私にいちばん振り回されながらも、それでもそばにいてくれる。そんな彼らが、私のせいで「隣に住んでいたらイヤだ」と思われてしまうかもしれない。ご近所にだって「ステルス荒井秘書官」はいるはずだ。
しかし、それが「性別が男性」あるいは「男性にしか見えない」と思われるとしたら……? それによってパートナーの評価まで変わるのではないかと、私は怖くてたまらない。
性自認は男性で、男性が好き
夫にとっては「話が違う」?
その矛盾に気づいたことで、私はようやく「自分をどうしても男性としか思えない」と、はっきり受け入れることができた。このとき私はすでに男性と結婚して、男性の実家で義理の両親と同居していた。
考えてみてもらいたい。もし、好きあって結婚した相手の女性が「自分は女性ではない」と言い出したとしたら……?
「話が違う」と言われても、おかしくないと思う。夫や家族は、私にいちばん振り回されながらも、それでもそばにいてくれる。そんな彼らが、私のせいで「隣に住んでいたらイヤだ」と思われてしまうかもしれない。ご近所にだって「ステルス荒井秘書官」はいるはずだ。


