どうやら今回の新名さんは“導かれる人”らしい。一度目は不合格だった昇進試験のための勉強をみちに教えたあと、彼が車で送ってきたのは陽一の姉の子どもたちが参加する発表会の会場。
すぐ帰ろうとした新名だったが、中からピアノの音色がこぼれてきて、思わず「モーツァルト」とひとりつぶやく。
このつぶやきがいい。岩ちゃん、ほんと演技がすこぶるさえてる。音の鳴る方へ吸い寄せられるように会場へ(新名さん、いったい何を始めようというのだ!)。すごく淡々と場面が描かれているのに、すごくつややか。
何だか不思議な雰囲気が終始漂う。この最終話は近年のテレビドラマ史上最大の力作ではないか。クライマックスへ向け、岩田は丁寧に丹念に新名役をまっとうしようとする。彼に導かれる視聴者の心には新名が永遠に刻まれる。

誰かを一途に思い続けること。新名にかせられた使命が彼をがんじがらめにしている。でもこの一途な気持ちがなければ、新名は新名ではない。
ここで再び、不倫か、純愛か問題。全編を通じ強迫観念のような感情とたわむれてきた新名にならって、筆者もそろそろ判断を下したいと思う。いやでも……。これはやっぱり決めきれないのだ。「ここまで引っ張っておいてそれか!」なんて野暮はこの際抜きにして。
だって岩ちゃんのラストショットを見たでしょう。雨の中、傘を差しながら微笑む新名の姿は、第10話の居酒屋場面での切実な「はい」と絶妙に響き合う。やるせなさに沈むのではなく、また歩き出そうとする(でも変わらぬ)意志をこんなに素晴らしい表情で浮かび上がらせてくれた。