二度の性暴力を受け、障がいを抱えて生きる女性が“やり遂げたい2つのこと”
それを見るわたしもまた嬉しかった。PTG*を感じさせてくれる反響は、何にも代えがたい報酬だった。
*PTG(Post Traumatic Growth):「心的外傷後成長」といわれるもので、トラウマティックな出来事やその後のPTSDといったつらい経験が、人間としての成長につながること(編集部註)
性暴力被害者だと名乗ったうえで、普通の顔をして生きられる社会の実現。そのなかにはもちろん、働くということも含まれている。
わたしとしては、ぜひとも納税できるくらい働きたいと考えていた。なぜかというと、性暴力被害者が社会の一部として責任を果たせる存在であり、自分の生き方を決める力を持っていると示したかったからだ。
新しい会社に初めて出社した日、日本人男性の部長から、
「あなたのことをどのように紹介したらいいでしょうか」
と尋ねられた。
「わたしの障がいについて皆さんに知ってもらっている環境で働きたいという考えがあるので、以前の仕事で性暴力被害に遭いPTSDという障がいを患っていることを、隠さずに伝えていただきたいです」
と答えた。
部長は「わかりました」と前向きな様子で頷いてくれた。
しかし三〇数人の部下の前に立った時、部長の手が小刻みに震えているのが見えた。先ほどわたしが伝えた「障がいについて知ってもらっている環境で」という言葉がメモされている紙が、部長の手のなかでカサカサと音を立てていた。
直観的に、部長は「性」という単語を口に出すことが恐ろしいのだろうと感じ、わたしは途中から話を引き取って、自分で自己紹介をした。