
「普通、不倫相手に家庭の話とか聞かされると嫌なものだというけど、私は彼の家庭の話を聞くのが好きなんです。彼の背景も含めて、まるごとの彼を知りたい、愛したい。
特に話してとせがんだわけじゃないけど、彼はポロリとしゃべるタイプ。だからといって、自分には家庭があることを私に常にわからせたいという意図があるわけではないのはわかる。彼も私にすべてを受け入れてほしいんだろうなと思っていました」
家庭では話せない仕事のことや、不思議に思う妻の言動なども話してくれた。彼女はときに彼とともに怒り、ときに彼の妻の心情を解説した。彼が何でも話せて、気持ちも体もリラックスできる場を、彼女は自ら作っていった。それが彼女の愛情だった。その結果、4年も関係が続いてきた。
「一緒に映画を見にいったり、ふたりで花見に行ったりもしました。彼は私を“気が合う部下”として部内に印象づけてくれた。仲がいいことは隠さなくていい、関係を持っていることだけ知られなければいい。そういう考え方だったんですね」
職場はもちろん、彼は妻にもまったく知られていないと自信をもっている。
「本当に偶然なんですが、私が住んでいる町に、彼の遠い親戚が住んでいるらしいんです。だからときどき彼はそこへ寄っている。そうすればこの近辺で彼が誰かに見られたとしても妻には言い訳がつくから、と。策士だなあと思いました(笑)」

妻にバレそうになったら、彼女はさっさと身を退くつもりでいる。もめごとを起こしてまで続ける意味はないと割り切っている。学生時代からの親友に話したら、「奪い取るほど好きじゃないということ?」と聞かれた。
「そうじゃないんです。奪い取る以上に愛しているということなんです。彼の幸せを願っているから、彼の現状をまるごと愛しているから、誰かを傷つけたくない。彼が『誰かを好きになったら、すぐに言ってね』と私に言ったのと同じ気持ち」
不倫するなら離婚してからつきあえばいいという話をよく聞く。だが、現状を変える必要がないなら、「本気の恋愛をそのまま続ける」という選択肢があってもいいのではないだろうか。「誰にも知られない」のを絶対的条件として、ではあるが。
「彼が好き。その気持ちだけです。子どもと遊ぶ時間があるなら私にも会って、なんていうふうには思わない。彼には彼の優先順位がある。
私は彼を最優先にしているけど、彼の最優先は私とは限らない。それだけのことだと思います。彼は彼の状況の中で、私にちゃんと愛をくれているから、私はいつも満足しています。
いつまで続くかわからないし、明日にでも終わってしまうかもしれない。だからこそ、会えるとこれが最後かもと思ってすべての愛情を交換しあう。そんな感じですね」
彼女の笑顔に曇りはない。
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<文/亀山早苗>
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