「緊張することあるんですか?」キャリア30周年目前の津田健次郎、緊張しいな後輩声優・川井田夏海への一言が心に刺さる
津田さんは緊張することってあるんですか?
――ちなみに、津田さんは後輩の方とご一緒される場面が多いかと思うんですけど、接するときに気をつけていらっしゃることはありますか?
津田:できればまとまらずに、定型にはまらず、思うがままに自由にのびのびとやってもらえたら。そういう空気を作れたらな、と思っています。うまくできているかどうかはわからないですけど(笑)。
川井田:はい、のびのびとやらせていたきました!
津田:よかった(笑)。
――これを機に、川井田さんから津田さんに聞いてみたいことはありますか?
津田:お。なんでもどうぞ。
川井田:緊張ってされますか?
津田:しないですね。
川井田:それはもう新人の頃からですか?
津田:もちろん緊張する場面は、あるにはあるんですけど、あんまり緊張しないですね。
川井田:羨ましい……。
津田:はははっ。
川井田:私はよく自分の手の震えで台本が読めなくなることがあるので(笑)。声優に限らずお芝居をたくさんやられてると思うんですけど、その現場でも緊張はされないんですか。
津田:緊張するシーンはあるんですけど、緊張の原因を探ったことがあって。やっぱり「良い結果を残したい」だとか、「よく見せたい」だとか余計なこと考えてることが多い気がしますね。あと、それこそ「私で良いのだろうか」とか、そういうことは全て邪念になるんです。それよりもやるべきことがあるので、そこを考えていれば、あまり緊張はしていかないかもしれない、と考えたりはします。人それぞれだと思いますけど。
川井田:私もそろそろ右手の震えを止めたいと思います。
津田:手は震えるんですよ、誰でも。震えても戦おうとせず、緊張してるな、でおいといて、それよりも今やるべきことをやる。例えば、このシーンのこのキャラクターは今何を思っているのか、そこに対して忠実にやっていこうとしたら、緊張はきっと消えると思います。
――川井田さんは今回の収録でもかなり緊張されたんですか?
川井田:はい。でも1回テストをしてディレクションをいただいたら、ひとつ呼吸が落ち着いた感じはありました。分かっていてもなかなか邪念をなくすことは難しいんですけど、1度テストでぶつけることによって、進んでいく道筋ができた気がします。気づくとシーンが終わっていたときもありましたね。相当集中していたのかな、と思います。
何もない人生よりは、しんどくても豊かな人生を
――わりと電話されてる!
川井田:本当にまだまだホームシックなので(笑)。家族に話すことは、乗り越えるというよりも、自分の中でわからなかったことを咀嚼して理解する一つの手段になっていますね。
――壁を乗り越えたり、何か困難にぶつかったときに成長というのもあると思うんですけど、大人になると成長に足踏みをしてしまったりもします。成長していくために、どのようなマインドを持たれていますか?
川井田:自分と同じ芝居をする人って他に1人もいないと思うので、現場では常にアンテナを張っています。舞台を見るときも、自分だったらどうするか?と入り込んで観てみたりとか。そうやって一歩グッと入り込むことで、役に立ったことが何回かありますね。それがうまくできなくて、ただただ引きずり込まれて気がついたら泣いているときもあるんですけど、自分が傷ついてもいいから一歩踏み込んでアンテナを張るのはいいことなのかな、と思っています。
津田:成長にも多分いろいろあるんですよね。例えば、僕なんかで言えば、良い芝居を、とか、良い表現をするためにはどうすればいいか、だとか、わかりやすいパターンではあるんですけど、そうじゃなくてただただ、平和な、穏やかな毎日を過ごしたいという方もいらっしゃると思うんですね。でも、それもなかなか難しいじゃないですか。平和で穏やかな日常を獲得するためにも成長というものも必要なのかなと。
自分が穏やかでいられるような精神性を獲得するだとか、周りの人に与えられるようなマインドを頑張って持つとか、キャリアアップとかスキルアップだけではなく、いろんな形の成長があるんですよね。だから、それぞれの成長の仕方、成長のビジョンがあっていいのかなと思いますし、自分が獲得したいもの、世界、人みたいなもののためには成長は不可欠になってくるでしょうし、ペースも人それぞれでいいと思いますし、年齢も関係ないですよね。
ただ、昨日よりも今日、今日よりも明日、ほんの1ミリでも何か前進していると素敵ですねって思います。
<取材・文/ふくだりょうこ 撮影/中川菜美>ふくだりょうこ
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ
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