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男性ものの下着を身につけるのが生理的に耐えられない…自分は“普通の男性”だと思ってたのに

――「開放感」という言葉、他のトランスジェンダー女性も同じように表現されていました。その人は男性が女性の格好をする「女装」ではなく、女性として女性の格好をする「女性装」と表現されていました。夢実さんもそういった感覚だったんですか? 佐倉イオリ202311夢実:そのときはまだ自分を男性だと思っていて、「女装」という感覚でしたね。だから、恥ずかしいことをしている気持ちがあったのかもしれません。 それに、自信もなかったんです。コスプレをはじめた当初は、体重が100キロを超えてましたし、お化粧も下手くそでしたから。 家の中でメイクや服を試すだけでした。それでも女性の格好をしていると、なぜだか「これが私」ってしっくり来るんです。 その中で、これなら大丈夫かなという格好ができると、出かけてみたくなりました。とはいえ、やっぱり誰かに見られるのは怖い。だから、深夜に出かけることにしたんです。うまく言えないんですけど……女性の格好で過ごす時間を増やすことで、本来の自分に戻っていくような感覚があったんです。

アイデンティティに気づき、「やばい」!

――でも、そのときはまだご自身のアイデンティティは男性のままだったんですよね。何か「女性なんだ」と思うきっかけがあったのでしょうか。 夢実:あるとき、男性ものの下着を身につけるのが生理的に耐えられなくなってしまったんです。女性の下着を身につけるとホッとしました。「やばい」って思いましたね。 佐倉イオリ202311――「やばい」……それはどういう意味ですか? 夢実:こういう言い方はよくないんだけど……自分を普通の男性だと思ってたのに、ホントは女性、性的マイノリティの人になっちゃうんじゃないか、っていう意味での「やばい」です。 ――なるほど。私にも似た経験があります。メディアで見るようなトランスジェンダーと自分は別ものだと、ずっと思っていました。本物の“そっち”の人と自分は違うというか。「もしかして私も“そっち”の人?」と思ったとき、「やばい」というか、これ以上進んじゃいけない、みたいな感情もわきました。そういうことですかね? 夢実:そうです、そうです。「やばい」と思いながらも、「男性じゃないかも」と気づいた途端、せきを切ったようにいろいろなことが思い出されたんです。「子どものころ、女の子とばっかり遊んでいた」とか「お母さんの化粧道具で遊んでいた」とか。 どんどん自分の性別がわからなくなって「中性」、そしていまは「女性」と思うようになりました。一人称も「俺」から「僕」、そして「私」に変わってきたんですよね。

離婚覚悟で妻にカミングアウト

――夢実さんは4年前に男性として結婚したとのことですから、自分のアイデンティティが揺らいだのは結婚“後”ですよね。 佐倉イオリ202311夢実:そうなんです。男性じゃないと気づいてから、妻にもカミングアウトしなきゃいけないと思いました。だって、男性としての私と結婚してくれたんです。黙っているのは、その妻をだますように思えていたたまれなかった。 結婚前、私は愛知に住んでいて、結婚を機に妻の職場がある東京に越してきたんです。仕事も辞めていましたが、離婚覚悟で正直に打ち明けました。 すると、「いいんじゃない、しょうがないよ」と、拍子抜けするほどあっさり受け入れてくれました。すごく不安だったのに……肩透かしを食らった気分になりましたね。 彼女は「あなたを男性と認識して結婚したし、いまも男性として好きだ」と、納得していないし認めていないというんですけど、すごく協力的なんですよ。私は戸籍上の名前を女性的なものに変更しているのですが、これも彼女が勧めてくれました。 先日なんて、私もウェディングドレス着たいだろうって、写真スタジオを探したり、ウェディングフォトの撮影も手伝ってくれたりしたんですよ。
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妻の協力を得て、女性らしく見える努力を
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