M-1決勝、流れを決定づけた「令和ロマン」髙比良くるまの“最高の小ボケ”
12月24日に放送された『M-1グランプリ2023』(ABCテレビ・テレビ朝日系)。史上最多の8540組がエントリーした今大会は、芸歴6年目の令和ロマンがトップバッター出番からの優勝を飾り、19代目王者となりました。
一般的に不利とされる出順一番手からの優勝は、2001年の中川家以降で初の快挙。さらに平成生まれのチャンピオンの誕生も霜降り明星以来。若きエースの躍進により、お笑い界に大きな変革を予感させる大会となりました。
この結末を<2024年は完全に令和ロマンのスタイルが流行る。彼らは『M-1グランプリ2023』だけでなく、時代のトップバッターになった>と、構成作家の大輪貴史(おおわ たかふみ)さんは評します。
大輪さんはかつてピン芸人「大輪教授」として活動し、2007年にはR-1ファイナリストに選出。現在はお笑い養成所の講師や、複数のお笑い事務所による若手芸人のネタ見せもつとめています。今大会の特徴や、令和ロマン優勝の大きな要因、さらに来年以降のM-1グランプリはどんな大会になっていくのか、考察してもらいました。
――今回はトップバッターが勝ち続けるという、くしくも『キングオブコント2023』の“カゲヤマ現象”の再来となりました。不利と言われて久しかったトップ出番が優勝するなんて、誰も事前に予想できなかったと思います。
<不利を覆(くつがえ)されましたね。正直、トップバッターが残り続けると、誰もその面白さを超えてこないということになるので、興行的には盛り上がらないんですよ。それでも、松本人志さんが彼らに90点をつけたことで、全体的に低めの採点にならざるを得なかった。ファーストステージ1位通過のさや香にも「令和ロマンを超えてない」という理由で80点台でしたからね>
――あれだけ令和ロマンが出てきただけで盛り上がったので、観客のノリが良い大会になるのかと思いきや、実際はそのようなこともなく。後の出演者たちはかなり苦戦しているように感じました。
<令和ロマンは一発目のボケが本当に良くて、そこが受け入れられた時点で勝ちだったと思います。特に「ヒゲとモミアゲをつなげて顔だけ独立」のくだりからの、くるまさんが口にした「歩くタックスヘイブン」という言葉。あれが大人たちを刺激したんですよ。コイツ、バカじゃないぞ。油断できないぞ、と。
彼らは本当に「漫才とは、賞レースとは」を研究し尽くしていると思われますからね。自分が得意とする時間の使い方やボケ配置を、しっかりわかっているんです>
――本大会で令和ロマンのネタがウケた要因はどこにあるのでしょうか。
<「ボケ数が多くツカミが早い」。これは準優勝のヤーレンズも同様なのですが、今回の二組の活躍を見ると、これまでのM-1とはメインストリームが変わる傾向にあると感じます。
具体的には2008年優勝のNON STYLEや、2007年3位のキングコングなど、のちに“競技漫才”と呼ばれるような、ボケ数が多いスタイルに近くなっているんです。ツカミは早く、ボケ数は多く、終わりはサラッと。時代がもう一度まわってきたのかなと思いました。
令和ロマンもヤーレンズも「このボケは誰かに刺さるだろう」という気持ちで詰めるだけ詰め込んで、時間いっぱいで「ありがとうございました」と終わらせる漫才をしていますね>
――僅差で準優勝となったヤーレンズですが、一票の差はどこで生まれたと思いますか?
<どちらが優勝してもおかしくなかった。どちらも本当に面白かったです。
ヤーレンズはこれまで試行錯誤を繰り返しながら頑張ってきたわけです。色々試した結果、いったん今回のスタイルになり、たまたま今年のM-1にハマったというか。来年以降はまた違ったヤーレンズに進化する可能性もありますよ。
ヤーレンズは私が芸人時代所属していた事務所の後輩にあたるため関係が長いのですが、昔から普通の芸人の3倍、4倍の数のライブ数に出てるんです。それを苦とも思わずやれているところに彼らの凄さを感じますね>






