失職した父のせいで見知らぬ男の妻に…“妾”にならなかった女の酷な行末|NHK大河『光る君へ』
願望を声に出して言うことは大事
まひろにフラれ、妾になることも断られた道長は兼家(段田安則)に倫子(黒木華)との縁談を進めてほしい、という。半ばヤケではなかろうか……と思うが、兼家としては好都合。
この結婚は藤原家のためでもある。兼家は強引に話を進めていこうとするが倫子の父・源雅信(益岡徹)はいい顔をしない。
兼家の思い通りになるのは嫌、ということもあるだろうが、雅信は娘がかわいい。そんなかわいい娘を兼家の息子なんぞにやりたくない、と思う気持ちもあるだろう。
しかし、倫子が想いを寄せているのは道長だ。倫子は道長を慕っていることを父に伝える。そして、打毬の会で見て以来、道長の妻になると心に決めていた、と。道長の妻になれないのなら、一生、猫を愛でて過ごすとも。そんなふうに言われてしまったら雅信としてはどうしようもない。かわいい、かわいい娘の言うことなのだから。
倫子の強いところは、想いを言葉にすることだ。
道長の妻になりたいと思っていても言えないまひろ。まひろに妾になってほしいと思っていても言えない道長。心で願いながらも言えない。
一方、倫子は想いを寄せている人を夫にすると言い、父にもはっきりとその想いを伝えた。結局、願いは言葉にするのが一番大事なのかもしれない。
倫子には勝てないと思ってしまう
想いを遂げる強さも良いが、やっぱり倫子は非の打ちどころがない女性でもある。
倫子を中心とした和歌の集いで、まひろが畑仕事をしたり、床を磨いたりしていると話すと、同席していた女性たちは明らかに引く。床を磨いているとたまに木目が顔が見えたりして……と和ませようとまひろは言うが、姫たちが床の木目に視線を向けることはないだろう。
しかし、倫子はさらりと私も探してみようかしらと腰を上げる。主賓である倫子が動けば、ほかの姫たちだって続く。やはり自分の地位と使いどころが分かっている女性だ。それも人のためにその力を使う。そう考えると、やはり時の権力者の北の方になる女性としてふさわしいのかもしれない。同時に、この人が道長の妻になった事実がまひろに与えるショックの大きさよ……。
この特集の前回記事


