
回復したまひろのもとには、百舌彦が様子を見に来ただけではなく、さわ(野村麻純)が訪れる。
一緒に石山寺を訪ねてケンカ別れをしていたふたり。まひろはさわに文を出していたが、そのたびに突き返されていた。
さわは疫病で兄弟を失っていた。そのことで命の儚さを知り、まひろとの友情の大切が身に沁みたという。また、まひろに追いつきたいと、まひろの文を一生懸命に書き写していた、と。再び、親しくつきあっていこうと約束するふたり。まひろにとっては嬉しいできごとだったのだろう。その夜は筆を持たずにはいられない、という衝動に駆られる。少しずつ、まひろの書き手としての衝動が積み重なっていっている。文章が人の心を動かす。その経験はまひろの人生を形作っていくことになる。
しかし、個人的には「そんなさわ……自分勝手な……」と思ってしまうのは性格が悪いからだろうか……。
一方、内裏では道隆が急激に体調を悪くしていた。安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)を呼び寄せるが呪いなどではなく「寿命だ」とばっさり切り捨てられる。
そんな道隆の心残りは家の繁栄。一条天皇(塩野瑛久)の寵愛を受けている定子(高畑充希)だが、まだ子はいない。そんな定子に「皇子を生め、皇子を」と迫る。今の時代なら炎上案件であるが、この時代でも十分不快な発言であることは定子のそばにいる清少納言(ファーストサマーウイカ)の表情から伺える。さらに、正気を失った状態で清涼殿に行き、御簾をめくりあげて一条天皇に「伊周(三浦翔平)を関白に」と迫る。
身内ばかりを取り立てていると公卿たちに眉を顰められていたが、道隆にとって一番大事だったのは本当に身内だったのだな、ということが感じられる。
そして一条天皇はその言いなり……にはならない。自分がどのように公卿に言われているかを一条天皇は知っていた。彼の心の中には民のためという気持ちがある。伊周を関白には命じないし、伊周への「内覧」の許しも道隆が病の間だけという条件をつける。関白家の思い通りにはもうはならない。