
「パキット」開発担当/三田さん
――ネックだと思っていたことが意外とそうでもないことがあるんですね。「パキット」はいかがでしょうか?
三田さん(パキット開発担当、以下略):パキットはまず、レンジで麺を加熱した時の仕上がりについての検証から始めました。
大きい鍋にたっぷりのお湯で茹でた麺と、レンジ調理容器で茹でた麺と、パキットの包材で茹でた麺など、様々な茹で方をした麺を比べてみました。その結果、パキットの包材で加熱した麺の仕上がりは全く遜色がなく、美味しく茹で上がることがわかったのです。
――滑り出しは順調だったんですね。
三田さん:ただ、その次の課題がコンセプトでもある「ソースで麺を茹でる」というところです。ソースに何が入っていると麺の食感に悪影響を及ぼすかを突き止めるために、特定の原料で麺を茹でて食感を細かくチェックしていき、ソースの配合を考えていきました。
――しかし開発は難航し、試作回数は1000回以上にも及んだけれど一定の茹で上がりにならないという課題がクリアできずにいたそうですね。

パキット「ボロネーゼ」
三田さん:そんな時、改めてパスタ調理について調べなおしていると、「蒸らす」という工程に気づいたんです。「レンジで加熱したあとに庫内で蒸らす」工程を加えたことで、どの種類のパスタ・どのような機種のレンジであっても、目指していたアルデンテ食感が実現できました。
さらにポイントとなるのが最後に容器内でぐるぐるとかき混ぜる工程です。普通のパスタソースをかける時にはやらないものですが、パキットは袋の中が鍋代わりでもあるので、ぐるぐるとかき混ぜて乳化させてとろみをつけることでより美味しさが増します。

レンジで蒸らした直後は水が多めだが、ぐるぐるとかき混ぜ「乳化」させ、完成!
当初のターゲットとは異なるシニア世代や単身者が購入するワケ

敢えて手で封を切り切り口をギザギザにすると開けやすい
――「レンジのススメ」も「パキット」も見事商品が完成したわけですが、どのような方が多く購入しているのでしょうか?
佐藤さん:発売当初は共働きの子育て世帯の方が忙しい時に使っていただける商品なんじゃないかなと思っていたのですが、発売から3年目に入った今、購買層で最も多いのは60代~70代の方なんです。
お子さんが巣立って夫婦だけでの食事になった方が、「火を使うのがだんだん怖くなってきたから」「子どもが家にいた時は頑張って料理をする気持ちがあったけど、旦那さんと2人だと面倒」といった気持ちがあり、商品に魅力を感じてくださっているようです。
特にポイントなのが、「素材を自分で切る行為がある」ことによって手抜き感も罪悪感もなく使って頂けているところ。
どうしても昔は「レンジ=手抜き」というイメージがありましたが、切る工程があるだけでもなんだか「料理をしたぞ」という気持ちになるんですよね。
特にこれから暑い季節は火を使う必要がなく、コンロ回りが油ハネで汚れることもない。手間はかからないけれど美味しいおかずができることにメリットを感じて頂けているのだと思います。
――お客さんと話していて開発者の方が気づくこともあるんですね。
佐藤さん:すごく細かい話だと、以前60~70代の方とお話していたら、「レンジのススメ」をキレイにハサミで開けようとすると、そのあと封が開けにくい!という意見があって。
でも実はこれ、手でも開けることができるようになっていて、ハサミでまっすぐじゃなく、むしろ手で開けてもらったほうがギザギザに切れて開けやすいんですよ、とお伝えしたことがありました。
――どうしてもキレイに開けないと!と思ってしまいますが、そうしない方が良いこともあるんですね!
佐藤さん:メーカーとしてもお伝えしていかないといけないなと思っています。