大河ドラマ『光る君へ』第36回(C)NHK(以下、同じ)
ついに動いた一条天皇と彰子の関係。
彰子の淡い想いが実った形となるが、それは新たな政争の火種ともなりかねない。
恋の影には欲望があった。
彰子(見上愛)が懐妊した。その知らせを届けるため、倫子(黒木華)のもとに走る道長(柄本佑)。待ちに待った瞬間だ。言葉を発せずとも倫子と道長の間には喜びがあふれているのが分かる。
子どもを身籠った彰子の表情は少しずつ豊かになっていく。子ができたこと、一条天皇(塩野瑛久)から愛されるようになったのだということ。環境の変化が彰子を変えた……いや、きっと、まひろ(吉高由里子)との出会いが彰子の心を変えたのだろう。周りに多くの女房がいるにも関わらず、彰子が一番信頼しているのはまひろのように思える。
出産を控えて、土御門邸に里帰りした彰子だが、そこにまひろも付き添う。倫子と道長の計らいで、執筆をする部屋も用意されていた。
まひろの物語が帝の心を変え、彰子を変えたと道長が聞いている、と言う倫子。まひろが彰子を救った、これからも彰子を頼む、と。こう言えてしまう倫子が、さすがである。自分が倫子の立場だったとしたら、ちょっとイラッとしてしまいそう……と思うが、娘を想う気持ちがあればそんなことは些細なことなのかもしれない。
彰子は、にわかに出産に不安を抱いていた。定子は出産がきっかけでこの世を去った。自分もそうなるのではないか、と思っていたのだ。
どこぞの兄や父は「皇子を産め」コールをさんざんしたものだが、子どもを生むということは今も昔も変わらず命がけである。
さらに彰子の出産の際には伊周(三浦翔平)は呪詛をしていた。最近の伊周は見るたびに呪詛しているような……。その割にあまり効果を発していないように思うのだけれど、どうなのだろう。しかし、今回はかなり強烈らしく、寄坐の寄坐の女たちの喚き声も加わり、出産の場は阿鼻叫喚。もはやいろんな意味で命がけだ。
そして彰子が命がけで産んだのは皇子。道長の地位を盤石にする存在となる。彰子を取り巻く人たちとしては、「でかした」という心持ちだろう。笑顔がこぼれる。
その中で、道長だけは複雑な表情を浮かべていた。皇子が生まれれば、今の力関係が変化する、争いが生まれる、と思ったのか。道長のその胸中を察したのは、まひろだけだったかもしれない。