――「同じ人間なんだ」と感じた、印象深いエピソードはありますか?
「戦後まもなくに行われた、盆踊りの話は心に残りました。混沌とした時期には『そんなのやってる場合じゃない』という風潮もあります。でも、『先人の魂が帰ってくるから』と開催した地域があったそうです。もちろん批判はあったようですが、祭り囃子を聞きつけた人たちがかけつけて、大勢で輪になって踊った。その瞬間は、辛いことも忘れることができたという話。
これって、コロナ禍と同じじゃないですか? エンタメって衣食住に関係がないから自粛ムードでしたけれど、結局は人がわいわい楽しむことは鋭気を養うことだと気づき始めた。戦争の時に気づいたはずのことが、数十年後は忘れ去られてしまっていた……」
――本当ですね。今度こそ忘れないようにしたい。
「エンタメは明日を乗り切るために必要なものだったんです。だから僕も、自分の活動に誇りをもってやろうと改めて思えました」
――竹森さんが今後やっていきたいことをお聞かせください。
「やっぱり若い世代に伝えていきたいですね。世の中の関係性がどんどん希薄になっているように感じます。自分さえよければいい、という人が増えているような。
でも横のつながりの大切さや、お父さんお母さんだけでなく、さらに上の人たちが途絶えずに生んでくれたから自分がある……という気持ちを忘れないでいてほしい。そんな世代を超えて伝えるためのエンターテインメントをやっていきたいです」
――アップダウンはM-1グランプリやキングオブコントで何度も準決勝まで進んだ経歴があります。率直にお聞きしますけど、今後お笑い芸人として賞レースなどに挑戦するつもりはない?
「今のところ出場するつもりはありません。評論されること、そこから有名になることへの興味はないし、自分たちの役割ではないと思います。『見られて良かった』『これで明日頑張れる』と感じてくれる人たちの前でやっていきたいんです」
――では、竹森さんのエンターテイナーとしての将来的な目標は?
「死んでも名前を残したいってことですかね。2024年12月に名古屋の劇団の方が『桜の下で君と』を上演してくれたんですよ。自分たち以外の人が演じたあの劇は、すごく良かったし嬉しかったです。
劇中にはアップダウンが登場するのですが、別の人たちがアップダウンを演じるということは、僕たちがいなくなった後もアップダウンはあの作品の中に生き続けられるんです。だからこそ、今後も色んな方たちに演じていってもらいたいですね」
――ありがとうございました!
<取材・文/もちづき千代子>
もちづき千代子
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。インコと白子と酎ハイをこよなく愛している。Twitter:
@kyan__tama