「女性が『こんな感じなんですけど……思い出せそうですか?』とメモ帳を差し出してきて、そこには眉を吊り上げ、口をへの字に曲げた中年男性の絵が描いてあって、それがぶつかりおじさんそっくりだったんですよ! 似顔絵を見た瞬間に私の記憶がパッと甦ったんです」
しかも、右上には小さく「最悪おやじ」と書き添えられていて……。
「私は思わず吹き出してしまい『すっごく似てます! しかもその文字が最高です! なんかスッキリしました』と笑っていたら、その女性も『よかった。私、美大だったんですよ。口頭で説明するよりこの方が伝わりやすいかな? と思ってつい描いちゃいました』とはにかんだように笑いながらそのメモをくれたんですよ」
そうして2人は軽く会釈し「じゃあ、お互いに気をつけましょう」と別々の方向に歩き出したそう。
「私は破ったメモに描いてある似顔絵を見つめながら、とても癒やされている自分に気がつきました。たった数分前まで、重く沈んでいた気持ちがウソみたいに軽くなっていて……あの女性には本当に感謝しかないですね」

※画像はイメージです
時に理不尽な目に遭い傷つけられることはあっても、同じ数だけ優しい人に救われているのかもしれないと綾香さんは思いました。
「それ以来、人混みを歩く時は考え事などせず周りに意識を集中して歩くようになりました。そして、あの時のメモをお守りのようにお財布に入れて持ち歩き、たまに見ては癒やされているんですよね」と微笑む綾香さんなのでした。
【他のエピソードを読む】⇒
「実録!私の人生、泣き笑い」の一覧へ
【あなたの体験談を募集しています!】⇒
心がほっこりした「ちょっといい話」、ありえない!「びっくりした話」「ムカついた話」、人生最悪の恋愛を募集中!(採用時に謝礼あり)ご応募はここをクリック
<文・イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
@skippop