二階堂ふみは、たばこをふかして、けだるそうな雰囲気を醸し、浜辺美波は、潔癖なぶりっこを貫く。ふたりはわかりやすいコントラストを作り出している。奇しくも、ふたりとも朝ドラで、才能ある夫に尽くして、先立つという役をやっていた。二階堂は『エール』(20年度前期)。浜辺は『らんまん』(23年度前期)で、健気に夫に尽くしたすえ、惜しまれつつ先立つ妻をチャーミングに演じていたふたりが、ここではがらりと雰囲気は違うがきついという点においては共通なキャラをやっているのがおもしろい。きつい役も健気に尽くす役もできる、なかなかの名優たちである。

『もしがく』6話場面写真©フジテレビ
女性たちのいがみ合いがいたたまれない『もしがく』。女性に限らず、ほかの人間関係も苦い。第6話ではうる爺(井上順)が降板する。そのきっかけは旗揚げ公演『夏の夜の夢』の打ち上げで、警官・大瀬六郎(戸塚純貴)がうる爺のマネをして受けているのをタイミング悪く当人が見てしまったことだった。自分じゃなくてもいいと思い込んでしまったのだ。

『もしがく』6話場面写真©フジテレビ
ここで、うる爺がおもしろいから完コピしたのだと言ってあげたらいいのに、誰もそう言わず、黙ってしまう。やっていることは演出家クベの要求どおりであり、それが最もうまくできる人が求められるわけで、若くて元気な大瀬のほうがよく見えてしまうのも仕方のないことだった。
しかも、うる爺は本番に弱い。なかには名優・是尾礼三郎(浅野和之)のように、ふだんは酒浸りの老人だが、舞台に立つと輝きまくる人もいる。これが売れる売れないやスターと凡人の差であろう。努力だけではどうしようもなく、理屈や倫理観で片付かないものが芸能の世界にはある。
彗星フォルモン(西村瑞樹)と王子はるお(大水洋介)のコンビ解散問題も然り。