第7話では、はるおだけにいい仕事の話が来て、彼は舞台を降板してテレビの仕事をすることになる。はるおは実は大スター・ポニー田中(堺正章)の御曹司で、その七光りも多分にある。

『もしがく』7話場面写真©フジテレビ
格差のあるフォルモンとはるおの別れ方がなんとも苦い。別れ際、フォルモンは冷静を装って、握手を求める。「いつかさ俺も呼んでくれよな」「お願いしますよ」と下手に出ると、はるおは汚いものを見るような目になって「どいてくれませんか」と握手を拒否して去っていく。メロウなピアノ曲の劇伴が鳴って、はるおもフォルモンも憂い顔。
取り残されたフォルモンは「はるお以上の相棒はいねえよ」とつぶやく。お互い本音を隠してお涙頂戴の別れにしないように強がっているようにも見える。それも嘘ではないだろう。でもはるおが自分だけ売れる仕事を選びフォルモンが取り残される残酷な格差は厳然たる事実。どうしようもないのだ。
クベもどうしようもない状況に追い込まれている。嘘に嘘を重ね続けてどん詰まりの袋小路。劇場のオーナー(シルビア・グラブ)には週120万円支払わないといけないが、思ったほど集客は伸びない。初週は、支配人(野添義弘)が大切な鎧を売って120万円を作った。翌週は、クベがはるおの支度金を口八丁手八丁でいただいて、それを支払いに回す。こんな綱渡りで毎週120万円なんて続かないだろう。はるおは「もうひとつ信じられないんだよ」とクベがお金を使い込むんじゃないかと懐疑的だったし、蓬莱(神木隆之介)は「こんなこといつまで続けるんですか」とクベに進言する。

『もしがく』7話場面写真©フジテレビ
「うるさい」と突っぱねるクベ、自分でも長続きしないのはわかっている。絶望していると、稽古場でトニー(市原隼人)がひとり稽古をしている。純粋に懸命に稽古している姿――それは汚れちまったクベの本来の姿(演劇が純粋に好き)でもあるだろう。だからクベは泣きながら、トニーに稽古をつける。この瞬間だけは嘘がなく、美しく幸福な時間である。

『もしがく』7話場面写真©フジテレビ
樹里が舞台上で俳優たちが楽しそうだと言ったときリカがむっとしたのは、樹里が舞台で生きる人たちの複雑なしんどさを樹里が知らないからだろう。楽しいこともあるけれど、決して楽しいばかりじゃない。思い通りにいかないことばかりでしんどいけれどほかにやれることがないのだ。しかもそのなかでも残っていける人と脱落していく人がいる。