ここで、第1話のレビューに戻ろう。筆者は第1話の時点で、『もしがく』のタイトルは映画『ペーパー・ムーン』(1973年)の主題歌「It’s Only A Paper Moon」ではないだろうかと考察した。「1984」つながり!の村上春樹が『1Q84』の冒頭で歌詞を引用している、あれである。
<ここは見世物の世界 何から何までつくりもの
でも私を信じてくれたなら すべてが本物になる
It’s a Barnum and Bailey world,
Just as phony as it can be,
But it wouldn’t be make-believe
If you believed in me.>
「ここは見世物の世界 何から何までつくりもの
でも私を信じてくれたなら すべてが本物になる」
まさに「芝居に大事なのは自分を信じる心だ」と繋がっているではないか。
いないはずの透明な猫も、おもちゃの拳銃も、全部つくりものでまがいものだが、見世物の世界では、俳優たちが懸命に演じることで、本物に見えてくる、そう信じて演劇人は日夜芝居をしているのだ。クベとトロの一騎打ちを固唾をのんで見守る俳優たちのリアクションもまた、本物に感じさせる見事な演技であった。