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どっちもヤバい!クズ男の生田斗真と、ハッタリかます菅田将暉。ふたりの決闘に“芝居の本質”を見た|ドラマ『もしがく』8話

三谷幸喜がやりたかったこととは?

 『もしがく』の作者・三谷幸喜は確か第1話の放送前から第8話の菅田将暉の芝居がよかったとコメントしていた。さらにこの作品は自分がやりたいことだと朝日新聞のコラムで書いている。
『もしがく』第8話場面写真©フジテレビ

三谷幸喜をモデルにした構成作家役は神木隆之介。『もしがく』第8話場面写真©フジテレビ

「(前略)現在放送中の連ドラ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」は、完全に自分の書きたいものを書いたパターン。(中略)今回は二十五年ぶりの民放ゴールデンであり、このチャンスを逃すともう次はないかもしれない。僕としては、ここぞとばかりに自分の好きな世界を書かせて頂いた(後略)」(三谷幸喜のありふれた生活:1256 僕の好きな世界と「数字」/2025年11月13日より) 「もしがく」第8話こそ、三谷がやりたいことが詰まった回であろう。これは三谷が監督した映画『ザ・マジックアワー』(18年)とも通底しているように思う。売れない脇役俳優(佐藤浩市)が映画撮影だと騙されて伝説の殺し屋を演じ、本物のギャングと対峙するという奇想天外な喜劇。俳優の演技力に本物が気圧されていくのがありえないけどおもしろい。街のセットを作り込んでいるところも『もしがく』と同様だ。三谷はこういったフェイク前提な物語を好んでいるのだと思う。 『ザ・マジックアワー』は23年には中国で『トゥ・クール・トゥ・キル ~殺せない殺し屋~』としてリメイクされた。今回の『もしがく』は、三谷の『ザ・マジックアワー』を中国人が少し生々しく撮ったときのような雰囲気があるように思う。
『もしがく』第8話場面写真©フジテレビ

1980年代の電話ボックスに貼られていた、テレクラなどのピンクチラシも再現

決闘に至るまでの布石がプロフェッショナル

 偽物が本物になる瞬間の尊さが描かれた第8話だが、そこに至るまでの構成こそがさすがの盤石さだった。
『もしがく』第8話場面写真©フジテレビ

警官なのに、実は演技のすごい才能があった大瀬。『もしがく』第8話場面写真©フジテレビ

 人手が足りなくて、俳優をやることになった警官・大瀬が仕事中にこっそり芝居に出るため、拳銃も所持しているというハラハラ展開。モネ(秋元才加)の息子・朝雄(佐藤大空)が拳銃に興味を持ち、触らせてあげると常軌を逸した約束をしていてこれもハラハラポイント。伴(野間口徹)が子供のためにおもちゃの拳銃を作って与え、そのおもちゃをクベが本物と勘違いして持ってトロに会いに行くのが流れである。
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「おもちゃの銃」にも深い意味がある
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