「凍りついたような声で夫が『母さん。今の、全部聞こえたけど』と割り込んできてくれて。 義母は『えっ、これはその……冗談よ冗談』と引きつった笑顔を浮かべ慌てふためいていましたが、私はやっとボロを出したなと心の中で舌を出して小躍りしたい気分でしたね」
義母は顔面蒼白になり、いつもの猫かぶりは完全に剥がれ落ちて、意地悪な素の自分に戻っていたそう。
「夫は義母に向かって低い声で『夏実が大袈裟だって勝手に決めつけていた俺がバカだった……母さん、酷すぎるし最低だよ! こんな人間だとは思わなかった』と表情を曇らせると、義母は慌てて取り繕おうと必死に『誤解よ! 冗談に決まっているじゃない』と言い訳をしていました」
夫は「嘘はもういいよ。誤解なわけないし、全部聞こえてたよ」とだけ言い、重い沈黙が流れました。そしてそのまま義母の制止を振り払い、夏実さんの手を引いて帰宅しました。

「帰りの車内で、夫は運転しながら『本当にごめん。夏実を信じてあげられなくて……もう母さんの好き勝手は絶対にさせないから』と言って、義母と距離を置くことを自ら提案してくれたんですよね」
それ以降、夫は義母との連絡を最小限にし、訪問も断るようになりました。すると今度は一転して、義母の方から頻繁に連絡が来るようになったそう。
「『あの時は誤解だった』『あなたを傷つけるつもりはなかったの』って、急に低姿勢で擦り寄ってくるようになったんです。でも、一度見てしまった本性はもう心から消せませんよ」
立場が逆転した今でも、夏実さんは一定の距離を保ったままです。
「信じてもらえなかった過去も、義母の言葉の重さも、全てが“聞こえてしまったあの日”を境に、はっきりと形を変えたんですよね」と微笑む夏実さんなのでした。
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<文・イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
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