“地獄”は子どもの嘘に効く【シングルマザー、家を買う/38章・後編】
⇒【前編】「保育園はスカート禁止」に抵抗した娘がついたバレバレの嘘 【シングルマザー、家を買う/38章】
私「ねぇ、本当に先生がいいって言ったの?」
娘「……うん。だからみんなスカートはいてきたもん」
お、これは「みんながやっているから私もやりたい!」という子供によくあるいいわけだ。
私「みんなって誰?」
娘「……ちょっとそれはわからない」
早い。ボロが出るのが早い。しかし、まだ娘は目を合わせない。
私「じゃぁ、一応先生に確認の電話して聞いてみようか」
その時の娘の目はキッと見開き、これまでにないほど鋭い光を放った。そして大急ぎで「いや、それはちょっと!」と言い出すのだ。わが娘にしてはつめが甘すぎる。しかし、ちょっと泳がせると娘はこう言ったのだ。
娘「せ、せんせいはいまいそがしいからでんわはやめたほうがいい!」
オトナ! 大人かよ!
もうここまでくると笑えてくるし、怒る気がしない。しかし、ここは嘘をついたということでちゃんとけじめをつけなくちゃいけない。そこで私は娘の顔を見て、嘘をついたらいけないこと。そして我が家のオリジナルルールとして、嘘ポイントがたまると地獄に行くことを説明した。
完全に脅しである。でも、5歳児はこれくらいしないと懲りない。すぐにでも次の嘘を発してくるのだ。
私「今ので嘘ポイントが1つになったよ。あと4つ嘘ついたら、地獄に行くんだからね。そしたらどうなるのか知らないよ!」
すると気丈にふるまっていた娘が肩をガタガタ震わし、涙ぐみながら私にこう言ったのだ。
「じごく~~~! じごくはいや~~! いまのうそだから~~! スカートはもうはかないから~~~!」
その顔は今までにないほどパニックになっている。これはやりすぎたかと抱きしめて、「いや、休みの日は履いていいよ」というと、娘は「ふぇっつふえっ!」とえづきながらうなずいたのである。かわいくて仕方がない。
この日から、娘は嘘をつくことがなくなった。相当地獄が怖いのだろう。娘が考えている地獄がどんなものかもわからないけれど。
しかし、これで対応できたのは、まだかわいい年中さんだったからこそ。小学校ともなると、友達関係など悩むことがたくさん増えるのだ。その話はまたいつか。
<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>
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【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ、フリーライター。西野カナなどのオフィシャルライターを務める他、さまざまな雑誌で執筆。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘は“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky)
※このエッセイは隔週水曜日に配信予定です。

いざという時の“地獄頼み”

- ママ。80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。
- 娘(8歳)。しっかり者でおませな小学2年生。イケメンの判断が非常に厳しい。
- 息子(5歳)。天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをもろともせず保育園では人気者
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980)
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『シングルマザー、家を買う』 年収200万円、バツイチ、子供に発達障がい……でも、マイホームは買える! シングルマザーが「かわいそう」って、誰が決めた? 逆境にいるすべての人に読んでもらいたい、笑って泣けて、元気になる自伝的エッセイ。 ![]() |
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