その次は、自分が探しているものであることです。
一目ぼれの多くの失敗は、探してもいないものを買うことによって生じます。予算があって、着られる服が売っているお店で、自分の目的に合ったものなら、それは問題ありません。

WEARより
目的とは、例えば「ネイビーの通勤用の真夏と真冬以外着られるコート」かもしれませんし、「夏休みに南の島へ旅行する際、海が見えるホテルで着るためのドレス」かもしれません。
その目的の枠を作った上ですべてがクリアするものの中で一目ぼれするのならば、一向に構いません。逆にそれはそうであるべきです。自分の決めた枠内の中ではあるけれども、
合理的な理由だけで買うとしたら、それでは本当の意味でファッションを楽しむことにはなりません。
合理的な理由とは、汚れない色だから、長く着られそうだから、今セールだから、みんなが持っているから、お母さんが勧めたから、彼が好きそうだから、雑誌に載っていたから、ハイブランドのものだから、会社の上司に文句言われそうにないから、着まわしできるから、カラー診断であなたに似合うと言われた色のものだから、アイロンをかけなくていいから、とにかく楽だから、体型カバーだから、パーソナルスタイリストの人が選んでくれたものだからなどなど、ありとあらゆる合理的だと自分が思っている理由でもって服を選ぶのなら、心が満たされることはないでしょう。

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もちろんこういった合理的な理由のいくつかは考慮しても構いませんが、条件だけで合理的に選んだ配偶者を愛するのが難しいように、そんなつらつらと言い訳を並べ、自分を納得させた上で買った服に愛を感じることは難しいと思いますし、何より自分の気分がよくはならないでしょう。
自分の枠と目的を把握し、その中で探す一目ぼれは、実はそんなに多くはないはずです。なぜなら、
あなたにぴったりの服など、そうそうは売っていないからです。だって、あなたの顔も身体も過去の傷も未来の夢も、ほかの誰とも違うのですから、そんなあなたにふさわしい服は滅多なことでは出合えないはず。
もし一目ぼればかりしてしまうのでしたら、もう一度、自分が好きな色と、何の目的でどういう服が必要かをはっきりさせましょう。そうすれば、無駄な一目ぼれも止まり、本当に好きで必要なものだけのワードローブを持つことができるでしょう。
<TEXT/小林直子>
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【小林直子】
ファッション・ブロガー。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒、文化服装学院卒。東京コレクション参加ブランドのパターンナー、大手アパレル会社の企画室を経て独立。現在、湘南エリアを中心に独自に開発したメソッドによるファッション・レッスン、各種ワークショップを開催するなど活動中。5月に新刊を発売予定。ブログ『
誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』