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福井の羽二重餅、生だとすごいんです【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」】

生羽二重餅は自ら「食べにくさ」をアピール

 送られてきた羽二重餅は2箱あったのだ。大事なものだから2箱入れたのか、と思ったが、どうやら種類が違うのだ。 「生羽二重餅」そう書かれていた。  生キャラメルを発端に、何でも生にしてしまえブームを経た我が日本だ。羽二重餅が生になっていてもおかしくはない。おかしくはないが、この生羽二重餅、何かおかしい。  まずパッケージの情報量が半端ない。普通の羽二重餅が「食べればわかる」というぐらいシンプルなパッケージだったのに対し、こちらは「まあ食う前に俺の話聞けよ」と言うぐらい色々書いてある。
生羽二重餅箱

生羽二重餅パッケージ(マエダセイカ オンラインショップより http://www.maedaseika.co.jp/)

 まず「食べにくい新食感」と書かれている。まさかの食べづらさ推しだ。つっこまれる前に自分で切腹しておくという高等テクである。  他にも「解凍後は冷凍保存がおすすめです(冬眠します)」「食べるときは常温に戻してから召し上がるのがおすすめです(眠りから目覚めます)」など、明らかに普通の羽二重餅と比べて「テンションがおかしい」のだ。  様子が違いすぎるので別メーカーかと思ったら、どちらも「マエダセイカ」製の羽二重餅だ。ここも昭和29年から続く店である。  だがこの際、外見はいい。肝心の食べづらさの新境地を開いた生羽二重餅とはどのようなものか、さっそくあけてみた。

ゲル状の羽二重餅が箱一面に!

 そこは一面の羽二重餅だった。「生」の名に恥じない、ゲル状の羽二重餅が箱一面に張り巡らされているのだ。  それを、ヘラですくって食べるのだ。確かに普通の羽二重餅よりは食べにくいが、風呂場で全裸で食ったほうが良い系ではないので安心だ。
生羽二重餅

生羽二重餅(マエダセイカ オンラインショップより http://www.maedaseika.co.jp/)

 味はというと、普通の羽二重餅が「結構な御点前で」という美味しさだったのに対し、こちらは「あま、うま」という逆にIQが下がる系の美味さである。  これはいろんな意味で「新しい羽二重餅」だ。伝統は守りつつ、新しいことにも挑戦しているのである。  ところで、言うほど食べにくくない、と感じた生羽二重餅だが、これを取引先の会社等、大人数が分けて食べる可能性がある場に土産として持って行ったら、出禁である。  切ってないカステラなどの比ではない。そういう食べにくさはだけは確実である。 <文・イラスト/カレー沢薫> 【カレー沢薫(かれーざわ・かおる)】 1982年生まれ。OL兼漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。自身2作目となる『アンモラル・カスタマイズZ』は、第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。主な漫画作品に、『ヤリへん』『やわらかい。課長 起田総司』『ねこもくわない』『ナゾ野菜』、コラム集に『負ける技術』『もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃』『ブスの本懐』などがある
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