まさかの親戚一同による「子作りパワハラ」でしたが、香川さんにははっきりと反論できないある理由がありました。
「実は私、親戚には黙っていたのですが、不妊治療をしていたんです。それなのに、私と妊婦以外の12人が一堂に『子供はいいわよ』と子供を持つ幸せを語り始めて……。
耐え切れなくなった私は『私も欲しいんです。だから不妊治療しています』という言葉が、のどから出かかってきましたが、また集中非難されるのではと怖くなってやめました」
妊活アピールのチャンスを、なぜ香川さんは逃してしまったのでしょう。
「山梨は田舎で、しかも7年前はまだ不妊治療が今ほど世間に浸透していなかった頃でした。あまりにツラくて、帰りの車の中で泣いてしまいました」
それでも「なんとかする」という夫の励ましで、やっと元気になった香川さん。
「それから半年後に夫婦揃って帰省すると、夫が母親と従妹に不妊治療を打ち明けました。2人とも『ごめんなさい』と謝ってくれて。翌年の元旦のお茶会では、全員が『反省しています』と謝罪。ほっとしました」
その後も香川さんは夫婦で不妊治療に励むものの、5年経っても子供に恵まれなかったため、夫婦二人だけの人生を考え始めた時に、自然に妊娠して、3年前に長男を出産したそうです。
「夫の親族の中で、一番小さい子供を可愛がってくれています」
でもあの年のお茶会のトラウマのせいか、元旦の夜から自分の実家でゆっくりと過ごすようになったそうです。
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クリスマス・年末年始の忘れたい記憶 vol.11―
<TEXT/夏目かをる イラスト/ただりえこ>