
一目ぼれを信じますか? もしくは一目ぼれの経験がありますか? 今回、ご紹介するフランス映画
『アデル、ブルーは熱い色』は一目ぼれから始まる、ふたりの女性がヒロインのドラマ。ヒロインがふたり? 実は本作で運命の出会いが起こるのは、女性と女性との間。
激しいセックスシーンも登場する、女同士のリアルな愛の物語です。
カンヌ国際映画祭で最高賞(パルムドール)を受賞した本作。通常、トロフィーは監督に贈られますが、本作では、アブデラティフ・ケシシュ監督のみならず、アデル・エグザルコプロスとレア・セドゥの
ふたりの女優にも贈られました。これは同映画祭史上、初めてのこと。
本編を観ればその快挙も納得。彼女たちの存在なくして、本作は成立しえないからです。
原題は『アデルの生涯』。主人公のアデル(アデル・エグザルコプロス)は、学校の先輩とデートし、女友達とのお喋りに時間を費やす普通の女子高生でした。でもある日のある交差点でのすれ違いから、彼女の運命は一変。青い髪の女性エマ(レア・セドゥ)に一瞬で心を奪われ、彼女のことが頭から離れなくなります。

まずアデル。女の筆者からみてもめちゃくちゃ可愛い。つい触れたくなるような唇を持った女性です。そして彼女が一目ぼれするエマ。これが女性なのにカッコいいんですよ!! ホント、ここでエマに魅力がなかったら説得力ゼロになっちゃうところですけどね。
観客もバッチリ、惚れます。
さて、再会したふたりは、付き合うように。初めての女性とのセックス。アデルは愛し、愛される歓びに満たされます。でもそれは、同時に愛の痛みの始まりでもありました。この、“愛の痛み”こそ、むしろ本作の中心にあるものだったりするんですねぇ。
物語は年月を重ねて進行していくため、アデルは高校生から夢だった教師に。エマとの関係も同棲へと発展しますが、美学生から画家になった彼女との間に、徐々に溝が生まれていきます。
ここからは少々ネタバレを含みます。なので、これ以上、情報は知りたくないよ!という方は、そのまま映画館でふたりの愛の軌跡を見届けてください。
⇒【動画】http://youtu.be/eurbk81TIP8
http://youtu.be/eurbk81TIP8
本作には女性同士の激しいセックス描写が幾度も登場します。というか、激しい、大胆というより、リアルな空気が充満していてドキドキしちゃうんですよ。いわゆる映画的なセックスシーンではないんです。

息遣いや彼女たちの表情から、その体温まで伝わってくるようで、おそらく最初は「ひゃ~!」と刺激にやられる人もいるかと思います。ただふたりが美しいこともあって、次第に慣れます。
それよりも、アデルとエマの間に溝ができて以降の、胸を締め付ける感情のほうに意識は支配されるはず。
ここら辺の“気持ち”の動きもとにかくリアルなんです。
まぁ、言わせてもらうとですね、カッコいいからって、エマがちょっとずるいんですよ! ふたりが大ゲンカをするシーンでは、アデルに落ち度(浮気)があったとはいえ、エマは100%アデルが悪いように断罪します。
観ている方としては、アデルが間違った行為に走った理由が、エマ側にもあることが分かっているだけに、辛いです。
それに、エマは別れて以降も、アデルと会ったり、完全に未練のあるアデルに対して「自分には“家庭”(もちろん相手は女性)がある」と言ってみたり(グッサリくる言葉でしょう?)、なおかつ、復縁は拒絶するくせに、「胸の中では愛し続ける」といった文句を口にするんです!
これって、酷くありませんか!? これがね、エマが魅力的なだけに、というか、だからこそ、余計にムカつくんですよ!
ただし、
本作は初恋の痛みを描いているので、作品としては完全に成功。こちらの感情を、まんまと手玉に取られるわけですね。美しい女性同士の激しい恋愛を覗いてみたい方には、ぜひオススメ。
それに、こうした痛みは、相手が女性だろうが男性だろうが同じなので、特別女性同士だということを意識せずとも、濃い恋愛モノとして心の奥に刺さります。そして最後にもうひと山……。ラストでのアデルの選択は劇場でご確認を。
<TEXT/望月ふみ>
『アデル、ブルーは熱い色』(R18+)は新宿バルト9、Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開中
(C)WILD BUNCH-QUAT’SOUS FILMS-FRANCE 2 CINEMA- SCOPE PICTURES-RTBF-VERTIGO
●オフィシャルサイト
http://adele-blue.com/望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。
@mochi_fumi