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不妊治療、ホントに必要?焦って始める前に知っておくべきこと

クリニックの「妊娠率」は意味がない

Q:では、不妊クリニックを選ぶ時に注意することはどのようなことでしょうか。 妊婦黒田:患者さんが不妊クリニックを選ぶ際に重視するのは、やはり妊娠率でしょう。医学的な専門知識がある方ばかりではないので、どうしても妊娠率という「分かりやすい指標」に頼らざるを得ないという実態があるのです。  特にこれから不妊治療を始めるという方は、当然ですが「できるだけ若いうちに」という希望をお持ちの方が多く、「妊娠率(受精率)が高い」と公表している不妊クリニックを選ぶ傾向がありますので、結果として受精率の高い顕微授精がされているわけです。  クリニックがホームページ等で「高い妊娠率」を誇っても、冷静に考えれば、ご自分達の不妊原因の軽い重いに基づいて、妊娠率は0%から100%に分布します。重要なのは「ご自分達の妊娠率」であり、「クリニックの妊娠率」は無関係なのです。  ここでお伝えしておきたいことは、日本で初めて体外受精児が生まれたのは1983年、顕微授精児に至っては1995年であり、ARTの歴史は浅いということです。だからこそ、妊娠が不妊治療のゴールではなく、治療で出生した子ども達が元気で一生を過ごせることを、長期にわたり見守る必要があります。妊娠率ばかりに目を奪われる現況を早急に見直さなくてはならないことを認識していただきたいのです。 **********  不妊治療を受けている若い世代、20代のカップルも増えています。もちろん20代でも、男性か女性が、どちらかに何らかの不妊の原因があると明らかになっている場合もあります。早い時期から多くの芸能人も不妊治療をしているということを公表して、不妊治療が特別な治療から当たり前の治療に変わってきているようです。  ただ、医療行為にはリスクはあります。納得した治療を受けていただきたいと思いますので、不妊クリニック選びも重要と言えるでしょう。 【黒田優佳子(くろだゆかこ)医師】 医学博士。慶應義塾大学医学部、同産婦人科学教室大学院卒業。ヒト精子研究の第一人者。東京大学医科学研究所研究員、女性初の慶大産婦人科医長を経て、2000年 自身の基礎研究に基づいた最先端の知識と技術を駆使した不妊治療を実現するため、独立。現在、黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長 <TEXT/ジャーナリスト・草薙厚子> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
草薙厚子
ジャーナリスト。元法務省東京少年鑑別所法務教官。著書に『ドキュメント 発達障害と少年犯罪 』『本当は怖い不妊治療』『となりの少年少女A』など多数
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