「僕が新しい商品企画を考えて彼女に話すと、彼女は目を輝かせて聞いてくれる。『あなたならできる』と言ってくれる。だから仕事への取り組み方も変わりました。どうせ今の部署でもたいして期待されていないだろうと思っていたけど、
彼女に『すごい』と言われたくて必死に企画を考えるようになった」
男は常に女性の応援を望んでいる。そうしたモチベーションが大事なのだろうが、妻はその役割は果たしてくれない。
「夜の営みも同じです。妻ともしていたけど、お互いに今さらそれほどの悦びはない。彼女とだとするたびに新鮮で、するたびに体が変わっていくような悦びがあるんです。彼女が感じてくれると、それは僕が男としてステップアップしていくと思える」
若い恋人は、彼にとって「生きがい」となった。
彼女と一緒にいる時間は楽しいけれど、彼女に対しても家族に対しても罪悪感はつのっていく。
「
彼女とは長くつきあっていきたいけれど、長くなればなるほど彼女の貴重な時間がすり減っていく。僕のために大事な時間を無駄にさせたら申し訳ない。家族に対しても、こんな父親でいいはずがない。それでもこの生活を手放せなくて、苦しくてせつなくて……」
恋に苦しむ自分が好きなだけなのか……。そう思ったとき、彼の顔が歪んだ。その顔があまりに苦しそうなのを見て、確かに
この人は恋に酔ってはいるが、苦しんでいるのも本当なのだと確信した。
男性が本当に恋に苦しむということはないと思われがちだ。ましてや不倫なら「酔っているだけ」と決めつけられてしまう。だが、はたから見て自己陶酔しているだけだと感じても、本人がどう苦しんでいるのかは本人にしかわからない。
不倫を肯定するわけではないが、こうして苦悩している男性もいることだけは伝えておきたい気持ちになった。
<文/亀山早苗>
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【亀山早苗】
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『
復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数