また、ある40代の女性公務員は夫の壮絶なDVが原因で離婚を決意しますが、母親が大反対。その理由は驚くべきものでした。 「子供がいなかった真弓さん（仮名）は、不妊が原因で夫からDVされているのをずっと我慢していたそうです。 　ところが同年代の友人夫婦が不妊治療をするために病院で検査をしたところ、夫の精子の数が少なくてしかも動きが鈍いと診断されたという話を聞いて、『ひょっとしたら子供が出来ないのは私だけのせいではないかもしれない』と思ったそう。 　その直後に、足を骨折するほどのDVを夫から受け、身の危険を感じた真弓さんは離婚を決意します」 　澁川さんから離婚までのアドバイスをもらい、さらにDV夫から慰謝料をもらうための方法を教えてもらった真弓さんは、着々と離婚に向けて準備をします。離婚の準備が整った時に母親に伝えると、母親から驚愕（きょうがく）の言葉をもらったのです。 「真弓さんは給料のほとんどを母親に仕送りしていました。離婚すると、真弓さんが自活しなければならないため、母親のところにこれまで通り生活費を入れられなくなるとわかると、『私はどうなるの？』と騒ぎ立てて、離婚に反対したそうです」 　夫から受けたDVで娘に危険が及んでいるというのに、母親は自分のことしか考えていない。真弓さんはショックで打ちのめされました。 「憔悴（しょうすい）しきった彼女が、私のところにまた相談に来たので、『お母さんの生活よりも、ご自分の命を大切にしなさい』と説得しました。もしお母さんが生活に困るようなことがあれば、生活保護でも受けて生きていけばいい。今はとにかくあなたが安全に暮らすことを最優先してくださいとね」 　澁川さんのアドバイスを受け入れた真弓さんは夫から慰謝料をもらって無事に離婚。母親から慰謝料をねだられたので、「今後の仕送りは少なくなるから」と、真弓さんは慰謝料のほとんどを渡したそうです。 「母親は死ぬまで、自分のことしか考えない人なのだろうと、寂しかったものの、真弓さんはDV夫と別れたことの喜びのほうが大きかったそうです」と澁川さん。 　それにしても、離婚がきっかけで親族の本音が分かってしまうなんて皮肉なものですね。家族だからといって、必ずしも味方になってくれるとは限らない。それが人生のようです。 ―離婚110番 vol.4― ＜取材・文／夏目かをる＞ ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】