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40代で初恋にとまどう夫。夫婦仲は良いのになぜ?|不倫男の胸のうち

恋する「不倫男」の胸のうち――Vol.8>  男性の不倫はどんなきっかけで始まるのか。相手女性への、そして妻への気持ちは。不倫事情を長年取材し著書多数のライター・亀山早苗さんが、不倫の恋に身をやつす「男性」たちの胸のうちをレポートします。(以下、亀山さんの寄稿)
エリート夫

写真はイメージです(以下同じ)

お見合いで結婚が決まるまで、女性を知らなかった

 若いときからずっと「まじめ一筋」で生きてきたマサキさんは、40代後半になって突然、「好きな人ができて困っている」と言う。  小学校から有名私立校に通い、国立大学へ。大学時代は留学もし、名前を言えば誰もが知っている超有名企業に就職した。それだけ聞くと、「うわ、エリートだ」と周りは思うが、本人はコンプレックスが強いそうだ。 「僕はたまたま要領がよかっただけだと思うんです。受験勉強が楽しかった。だけど本当に頭のいい奴は、受験勉強以上のことを学んでいる。大学に行ったとき、それを痛感しました。学問を追究したいという思いもあったけど、周りを見ているととても僕なんか研究者には向いていない。だから安直に就職したんです。才能がなかったこともそうだけど、もっと努力できなかったことを恥じています」  眼鏡越しの目はとても誠実そうで優しげだ。そんなマサキさんが結婚したのは35歳のとき。見合いだった。相手は30歳で、おとなしくて温かい人だという。 結婚「実は僕、結婚が決まるまで女性を知らなかったんです。恋愛したことがなかった。人を好きになる気持ちはわかるんだけど、それが“恋愛”というものにどうやったら変わっていくのかわからなかった。結婚も、どうしてもしたかったわけではありません。だけどひとりで会社と家を往復しているのも寂しいし、いいかげん家庭をもって落ち着けと親にも言われていたので……。周りは僕を遊び人だと思っていたかもしれません。そう思われるように振る舞っていたし」  結婚が決まったとき、彼は初めて風俗に行った。何もわからなかったら妻に対して失礼だと思ったから。 「風俗のおねえさんに事情を話して、いろいろ教えてもらいました。本当にありがたいと思った。いざ結婚してみたら、妻も初めてだったんですよ。事前に勉強しておいてよかったです(笑)」

お互いを思いやる理想の夫婦だけど……

 新婚生活を楽しむ間もなく、妻は妊娠。翌年には女の子が、そして年子で男の子が生まれた。今では中学1年生と小学校6年生になっている。 「僕はつきあい程度にしかお酒を飲まないので、社内の飲み会も一次会しか参加しません。接待が頻繁にあるような部署でもないし。だから残業がなければ帰るのは早いんです。子どもたちが小さいときはなるべく早く家に帰って、妻を休ませてあげたいと思っていた。子どもの成長を比較的つぶさに見ることができたのは、とてもよかったと思っています」 母子 妻との仲もむつまじかった。お互いに思いやりをもって接してきたとマサキさんは断言する。 「妻は人としてとても上品なんです。言葉がきれいとかそういうことではなくて、とても真っ直ぐで、まず相手のことを考えるタイプ。ただ、今思えば、お互いにどこか遠慮があったのかもしれない。“恋愛”しないままに結婚してしまったから」  家族に不満はなかった。それなのに、彼は恋に落ちてしまったのだ。生まれて初めて。しかもというべきか、だからというべきか、制御が効かなかった。

偶然の出会いから、外で恋に落ちてしまった

「ちょうど半年ほど前です。たまたまランチをとりに入った店で、座ろうとしたら女性ものの財布があったんです。店に預けようかとも思ったんですが、混み合っていて店側も忙しそうで。ちょうど数軒先が交番だったのを思い出して、ランチを中止して交番に届けたんです。  電話番号を聞かれたので用紙に書いておいたんですが、その日のうちに持ち主から電話がかかってきて。僕は中も見ていませんが、翌日から親戚の家に行くための飛行機のチケットが入っていたんですって。ものすごく感謝されました。戻ってきたら連絡してもいいですかと言われました」  お礼などしてもらうつもりはなかったが、電話の相手の声にマサキさんは震えた。体の奥まで染みこんでくるような声だったのだそうだ。どうしても会いたくなった。
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40代後半にして始まった“初恋”
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