除菌と殺菌は全然違うって知ってた?間違えがちな“キレイ”の基準
日本ヘルスケアクリーニング協会代表理事で、『図解 健康になりたければ家の掃除を変えなさい』(扶桑社)の著者でもある松本忠男さんは、病院清掃に30年以上携わってきた掃除のプロ。
これまで2回に渡り“正しい掃除”の方法を伺ってきましたが、なんと前回、「水拭きは汚れを塗り広げる」との衝撃発言が。そこで今回は、水拭きの本当のところを追求してみました!
――前回「水拭きは汚れを塗り広げるだけだから、しないほうがいい」とおっしゃられましたが、いったいどういうことでしょうか?
松本忠男さん(以下、松本)「汚れを小麦粉に置き換えて考えてみてください。小麦粉はパラパラしていますが、濡れタオルを被せて湿らせると、ねっとりデレデレになりますよね。その状態でタオルを左右に動かしたら、小麦粉は引き延ばされて、あたり一面に広がります。もし細かい傷などがあれば、そこにも入り込んでしまうでしょう。
やがて水分は蒸発するので、残された小麦粉はその場でパラパラの状態に戻り、つまりは、広げられただけの状態になります。水拭きでは、菌やホコリで同じことが起きているんです」
――想像すると恐ろしいです……。でも、水拭きをすると汚れが取れるように感じるのですが。
松本「『水を使っている』というすっきり感が大きいのでしょうね(笑)。実際は、雑巾の繊維に絡んで多少は取れるものの、引き延ばされている汚れの方が圧倒的に多いです。それに、たとえ雑巾に絡め取られても、床と雑巾のあいだにあることに変わりないので、そのまま拭き続ければ塗り広げてしまいます。要は汚れが移動しているだけ。広がったぶん濃度が薄まって、きれいになったように見えているだけなんです」
――では、拭き掃除はどのようにすればいいのでしょうか?
松本「から拭きですね。乾いた汚れは、乾いた状態のまま取るのがいちばんです。ただ、“拭く”というのは、上から押さえつけて横に引っ張る力しか働いていないので、汚れを除去するには、吸い取ったり摘み取ったり、上方向に働く力が必要です。いくらから拭きでも、左右にこすれば菌やホコリは広がってしまうので、一方向(雑巾の同じ一辺が常に進行方向を向いている状態)で、拭いてください」
――テーブルなどは「除菌剤」を使って拭くこともありますが、そのような場合はいかがでしょうか?
松本「“除菌”って『菌を除く』だけで、殺してはいないんですよね。極端な話、テーブルの一部を指でこするだけでも、その部分の菌が取り除かれれば“除菌”なんです。擦り取られた菌は、指に付着しているかもしれないし、押しやられて移動しただけかもしれない。でも、その場からは菌がなくなるので、“除菌”されたことになるという、すごく曖昧な表現なんです。
ドラッグストアやスーパーで買える“除菌剤”は、含有成分によっては菌に何らかの働きかけをするものもあるでしょうが、過度に大きな期待を持たない方が良いですし、拭き方にも変わりはありません」
――吹きかけるだけで除菌消臭ができるような、拭き取らないタイプの除菌剤はどうですか?
松本「『除菌消臭スプレー』は、まず『除菌』と『消臭』の2つを分けて考える必要があります。
『ニオイ物質』は『菌』とは限らないため、『消臭』はあくまで『ニオイ物質』を化学の力で変性させるものとお考えください。一方の『除菌』については、先ほどの『雑巾拭き』の話と同様で、その場から除かれる菌もあれば、その場に留まる菌もあります。
ですから、『除菌消臭スプレーとは、ざっくり言うと、ニオイ物質を分解、変性させることで、ニオイを軽減させたり、同時に菌の一部を除く商品』ということになるのだと思います。
また、多くのニオイ物質は水溶性のため、乾燥したニオイ物質を湿らせることで、水に溶かした後、水と一緒に除湿して取り除くことも一つの方法です」

「水拭き」は菌やホコリが移動するだけ

「除菌剤」はあまり意味がない!?

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