更年期の症状は個人差がある。ユウコさんはホットフラッシュだったり肩こりや頭痛など不定愁訴(ふていしゅうそ/明確な原因のない様々な体の不調)があった。だが仕事ができないほどではなかったという。

「彼も気遣ってはくれたんです、最初のうちは。だけど
結婚して3年ほどたつと、私が具合が悪いと言ったらため息をつくようになって。私が50代で彼は30代前半ですものね。お互いに無理があったのかもしれません」
そしてある日、彼は話があると言った。ふたりが結婚して5年たった記念日だった。
「病院へ行ってきたと彼が言うんです。どこか具合が悪いのと心配したら、『
自分は子どもができる身体がどうか調べてもらった』と。そして自分はできるとわかったって。僕は子どもがほしいんだと絞り出すような声で言われました。もし彼自身が子どものできない身体であればあきらめもついた、だけど
できるとわかった以上、あきらめられないんだって」
今さら、とユウコさんは思った。最初から言っていたのに、と。だが彼自身、知識があやふやだった上、結婚生活を送りながら気持ちが変わっていったところもあるのだろう。
「ちょうど更年期で心身ともに不調の年上女性と新婚生活を送らなければならなかったことを考えると、彼にはもっときちんと話をしてから結婚すべきだったと思います。彼の友人たちはちょうど子どもをもつ時期で、友だちの家に遊びに行って羨ましくなったりもしたんですって」

泣きながら話す彼を、ユウコさんはひきとめることはできなかった。このまま一緒にいたら彼の人生を狂わせてしまうから。だから「わかった」と言うしかなかった。離婚から1年がたつ今、彼女はその選択を後悔していない。
「どうしてという多少の恨みはありますけど、しょうがないという気持ちのほうが強いですね。かなり強引に押されて結婚して、あっさり逃げられた感じはするけど、うーん、
本当にこればかりはどうしようもない」
結婚してよかったかどうかの判断はまだできないという。ただ、彼が悪いわけではないと思うと、ユウコさんは最後まで元夫をかばう言葉を口にした。
<文/亀山早苗>
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