並行して、真希さんの行動に不審な点が目立ちはじめる。
「パートをはじめたんです。生活費も小遣いも十分すぎるほど渡しているのに、小学生向けの塾の採点とか、会計事務所の事務仕事とか」
また、森岡さんは家の中にダンボール箱がやたら多いことに気づく。
「聞くと、メルカリにいらないものを売って整理しているんだと。でも、
集荷より明らかに受け取っている量のほうが多い。不可解でしたが、あまり聞いてもまた怒られるので、深くは聞きませんでした」
さらに真希さんは「図書館めぐりが趣味になってきた」と口にしはじめた。
「資格を取りたくていろいろな図書館に通っていて、お気に入りの図書館はここなんだとか話すんですよ。突然どうしたのかなと思いながらも、ふんふん聞いてたんですが、
やがてその図書館の近くにワンルームマンションを借りたいと言い出したんです。もちろん家賃は僕の負担。理由を聞くと、資格の勉強をするにあたって、家だと集中できないし、図書館だと閉館時間があるからって」
さすがに不自然に思った森岡さんが問い詰めると、感情が高ぶった真希さんは
「さびしい」「あなたに不満がある」「これは事実上の別居」と口走った。その場ではやんわり流した森岡さんだったが、2017年5月、事態は急変する。
「日曜の深夜、真希が先に寝ていて、僕もそろそろ床に就こうと思っていたら、2頭いる猫のうち、やんちゃなほうの1頭が部屋を暴れまわって、机に置いてあった真希のバッグの中身をひっくり返しちゃったんです」
片付けようとした森岡さんは、カバンからはみ出したプリクラに目がいった。
「
プリクラの端っこがちらっと見えて、知らない男と真希が写っていました。とはいえ今どきプリクラですから、元彼との思い出プリクラかなと思って引っ張ったら、台紙ごと出てきたんです。そこには、
真希とその男ががっつりキスしているショットもありました。日付は2017年5月。つい最近でした」
それまで真希さんの浮気など一度も疑ったことがなかった森岡さんは、怒るよりも頭が真っ白になってしまったという。しかし、一晩悩んだ森岡さんは冷静さを取り戻す。浮気の現場を押さえるべく、探偵にコンタクトを取ったのだ。そして自らも証拠を集めはじめるのだが、そのやり方が実に東大卒らしい。