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離婚で「あらゆる地獄」を見た男性を癒やした親の言葉

「日曜の夜に家族4人揃って夕食をとっていた時のことです。僕はなにかの話題にかこつけて、得意げに『家族なんて旧来的な血縁の単位にすぎないんだから、べつに解体したところで個人の人生には影響がない』なんて偉そうなことを言い放ちました。当時傾倒していた小難しい文章だか小難しい映画だかの、読みかじりだか聞きかじりでね。何もわかってないガキなのに。 すると、それを聞いた父がバシン! と箸を置いて、『もう一度言ってみろ』と、激怒したんです。ただ、怒り方がいつもと違いました。普段は大声でどやしつけるところ、静かにキレてるんです。 場が凍り、皆の箸が止まりました。夕食は鉄板の焼き肉だったんですが、誰も箸をつけない肉がどんどん焦げていく。ジュウジュウという音だけが台所に響いてるんですよ。僕は血の気が引いて、とんでもないことを言ってしまったと後悔しました。父の顔を見られなくて、たまらず黙って席を立ち、自分の部屋に引っ込んだんです。あの時の父は、一体どんな顔をしていたのか……」 ぼくたちの離婚 Vol.14 健全な男の子ならば成長途上で誰もが通過する反抗期。この時から土岡さんと父親のあいだに溝ができる。しかし土岡さんが20歳を過ぎた頃には完全に「雪解け」に至っていた。それどころか、土岡さんにとって父親は大きな心の支えになっていく。

就職氷河期で知った父の思い

「僕は超就職氷河期世代なんですが、就職活動で大苦戦している真っ最中には、電話越しに励ましてくれました。自己評価がどん底にまで落ち込んでいる僕に、『自慢の息子だ』『俺はお前を誇りに思う』なんて言って。知ったふうな就活アドバイスなんて、一切しない。ただひたすら僕の存在を肯定してくれた。そんな言葉、実家にいる時には一度も言われたことがないのに(笑)。 これは何年か後で母に聞いたことですが、父は当時職場の同僚から、僕のために地元企業のコネ入社枠を用意しようかと持ちかけられたんです。にもかかわらず、父はその場で断りました。家で母に怒っていたそうですよ。『バカにするなよ。俺の息子がコネ入社なんかを喜ぶわけがない』って。父は、本当によく僕のことを理解していました。当時の僕はコネ入社を心から軽蔑していて、そんなふうに就職するくらいだったら、どうしてもやりたい仕事をバイトでもいいからやりたい、と思っていましたから」  初めて管理職になった時には、部下をもって働くことの責任や使命感を説き、土岡さんを鼓舞してくれた。 「地位が上がれば上がるほど謙虚であれ。今まで以上に勉強しろ。部下と酒を飲んでも本音が聞けるなんて思うな。お前は若手たちにとって『会社側』の人間なんだから、その壁を超えられるなんて思うな。目下の人間には与えるだけ与えろ。何かが返ってくるなんて期待するな。もし与えたものの100分の1でも返ってきたら上等だ、って。……素晴らしい父親です」
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すべてを見透かしていた母
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