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NHK『ばけばけ』53歳俳優の「朝ドラおもしろお父さん」再び。“リアル息子”との絡みも面白い

 髙石あかり主演の朝ドラ『ばけばけ』(NHK総合・毎週月~土あさ8時~ほか)に出演する岡部たかしが、主人公の父を演じている。朝ドラの岡部はほんと面白い。  伊藤沙莉主演の朝ドラ『虎に翼』(NHK総合、2024年)でも父役だったが、『ばけばけ』でも少しなさけないお父さんの味わいを醸している。  男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、本作の岡部たかしを解説する。

夜な夜な恨み節を込める家長

NHK『あんぱん』© NHK

NHK『あんぱん』© NHK

 随分と物騒な始まり方である……。髙石あかり主演の朝ドラ『ばけばけ』第1週第1回は、主人公・松野トキが小泉八雲をモデルとするレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)に怪談噺を聞かせる冒頭場面が置かれる。そこからトキの幼少時代に入る。  この幼少時代のワンカット目、上手から下手へ移動するカメラが捉える薄闇。カン、カン、カン。鈍い音。トキの父・松野司之介(岡部たかし)がおどろおどろしい様子で、わら人形を打ち付けている。ひぇ~!  江戸時代から明治時代に変わった。世の中も変わった。没落武家の松野家はそれでも武士のプライドだけを保っている。時代が変わったことがすべて悪い。家長である司之介はだからこうして夜な夜な恨み節を込めていたのだ。

朝ドラのレギュラーお父さん役

 司之介の後ろには松野家の面々が勢揃い。その中でトキだけ寝落ちしてしまう。振り返った司之介が「おトキ」と娘の名前を呼ぶ。岡部は、伊藤沙莉主演の朝ドラ『虎に翼』でも主人公の父を演じていた。 『ばけばけ』と『虎に翼』で主人公のお父さん役を演じていることになる。そろそろ朝ドラのレギュラーお父さん役とでもいったところだろうか。『虎に翼』では、「寅!」と愛娘の名前を口にする快活で人間味あふれる発声がよかった。 「おトキ?」とさらに疑問形で繰り返す『ばけばけ』でも基本的なトーンは似ている。少しおどろおどろしい始まり方の本作は、この呼び声によってスイートな怪談ドラマに仕上がる。
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「しぃじぃみぃ」キャラの味わい
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