「もちろんラブシーンも大事ですが…」岩本照主演ドラマの脚本家が語る“令和のラブストーリー”の難しさ
Snow Man 岩本照が屈強なボディガード・北沢辰之助を演じる主演ドラマ『恋する警護24時 season2』(テレビ朝日系)最終回が、12月12日よる11時15分から放送される。
2024年に「オシドラサタデー」枠で放送された前作『恋する警護24時』から「金曜ナイトドラマ」に放送枠が変わり、辰之助のさらなる成長物語をじっくり描く。そこで今回はオリジナル企画として引き続き脚本を担当する金子ありささんにインタビューを行った。
後編では両シーズンの名場面秘話やこれまでの脚本作品に共通するテーマ性、シリーズ作品としての意義など、イケメン研究家・加賀谷健が迫った。
【インタビュー前編】⇒「私の書いた中ではNo.1当て書き」Snow Man岩本照・主演作の脚本家が明かす“ドラマ誕生秘話”
――両シーズンの名場面なども振り返っていきたいと思います。まずseason2第3話です。(話数としての)経過点として見ていたら、さりげない感動回でした。習い事で忙しい少女の警護を担当することになった辰之助が野原に座り、彼女を励まそうとして「ボディガードとして一言言わせてください」と前置きしながらこう言います。「ここがあなたのいる場所です。立って地面に足がつく。ここです。そのことを忘れないでください」と……。
金子ありさ(以下、金子):辰之助なら言いそうだなと思い、あの台詞にしました。そして何より本作の神田エミイ亜希子プロデューサーから「辰之助と少女の交流が見たいです」とリクエストがあったことで生まれた場面でもあります。神田プロデューサーは要所で本質的なことをおっしゃる方です。第3話は他の回と少し違い、辰之助の表情がバリエーション豊富に出てきたことも個人的には嬉しかったです。
――あの台詞には金子さんの脚本世界に登場する女性キャラクターに共通するテーマ性が込められていると思います。本作の岸村里夏(白石麻衣)だけでなく、『着飾る恋には理由があって』(TBS系、2021年)の真柴くるみ(川口春奈)にしろ、「自分の足で立つ」逞しさがあります。一方で痩せ我慢しているところもある。前作の里夏は「私なら大丈夫」としきりに繰り返し、くるみは「大丈夫じゃない」と言いながら同時に「頑張ろう」と自分を鼓舞します。
金子:そうですね。私は基本的に力強い女性キャラクターが好きです。でもその強さというのは徹頭徹尾パワフルということはではありません。やせ我慢をしていたり、揺れ動いたりする中から剥がされて出てくるものであってほしい。それこそが本当の強さのリアリティだと私は思っています。
余談ですが、レディー・ガガの「Gypsy」という曲のサビにとても好きなフレーズがあります。一生一人は嫌だけれど、今夜だけなら私は大丈夫。この歌詞は、恋人を置いてジプシーのように世界中を回ってコンサートをしているけれど、それが今夜だけだと思えば頑張ることができるというような、レディー・ガガ自身の気持ちを歌ったものだと思います。
これはすべての女性の揺れ動く気持ちを力強く歌っているんだ。私はそう思い、この歌詞に強く共感しました。一生一人は嫌だけれど、今夜だけは頑張って、そういう夜を過ごすうちに一生一人で頑張れるかもしれない。私の脚本でも揺れ動く気持ちをヒロインに乗せたいといつも思っています。今作では白石さんがその強さ、柔らかさを表現してくださっています。
――前作第7話にも辰之助と里夏の心と心が決定的に通い合う名場面があります。トレーニングルームで辰之助が取ろうとしたペットボトルが床を転がり、しゃがみ込んだ二人が初めてはっきりと見つめ合う瞬間です。まだ付き合っていないけれど、両思いではある。でもベタベタはしない。こうした慎ましい恋愛関係は金子脚本のルールでしょうか?
金子:ラブストーリーを書く時に糖度の高いラブシーンを作ることも当然ありますが、ボディガードの男性がオフの時にあまりでれでれしていると不謹慎に見えてしまうと考えました。ラブコメ部分を強くするとどうしても一過性、刹那的になってしまうところもあります。
続編が出来たからには、辰之助というキャラクターを育てたい。ドラマとしてののびしろを掴みたい。もちろんラブシーンも大事にしています。ですがそこばかり描いているとより強いもの、刺激のあるものを求めてしまうあまり、逆に物語がパワーダウンしてくる。そうするともう『次』はないのです。
さらにラブコメの方程式に則って告白、交際、プロポーズ……という順序で二人の関係性を進めると、似たり寄ったりのドラマになってしまうジレンマもあります。令和の恋愛観としてそれでいいのか? とも話し合いました。
それをもって『ふたりが近付いた』とするより、名前の呼び方が変わる、相手の考え方をそっと理解する、その心の寄り添いを大事にしたいと思いました。正解はないとは思いますが、少なくともseason2は、色んな要素をバランス良く組み合わせるよう努めました。
――ラブコメでありながらラブコメという枠組みに押し込められない。そうした人間関係は『着飾る恋には理由があって』、さらにジャンル的にはラブコメではない『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』(TBS系、2023年、以下、『ペンディングトレイン』)などの作品でも共通していることだと思います。
金子:そうかもしれません。単純な図式にとらわれず、二人の行く末を見守ること。season2の段階では、そうやって視聴者の皆さんの想像の中に収めておく方がおそらく期待感が持続される気がします。岩本さん自身もまたとてもストイックな方です。ラブ、コメディ、事件性、ドラマ部分、様々な引き出しを稼働させていく方がより演じがいがあるだろうと想像していました。



