福島三羽ガラスの才能を見出し、世に送りだしてくれた小学校時代の恩師・藤堂清晴先生(森山直太朗)。彼なくして、物語は何も始まらなかったと言っても過言ではありません。

藤堂清晴(森山直太朗)(C)NHK
勉強もダメ、運動もダメ、言葉もうまく出ない主人公・裕一が運動会で転倒したとき、ハーモニカ演奏により、音楽という「生まれて初めてのエール」を送ってくれたこと。そして、「
ひとよりほんの少し努力するのが辛くなくて、ほんの少し簡単にできること。それがお前の得意なものだ。それが見つかれば、しがみつけ。必ず道は開く」という言葉で、裕一を音楽の道に導いてくれました。この言葉に勇気づけられた人や、我が子にこの言葉を聞かせたいと思った人も多いのではないでしょうか。
そして、貧乏暮らしの中で大好きな詩を書き続ける鉄男に対して、裕一を通して「頼ることは恥ずかしいことじゃない。自分の才能から逃げるな。一生後悔するぞ」等いうメッセージを送ってくれたのも、藤堂先生。「俺はないモノを追ったんだ」というセリフに、三羽ガラスとは違う凡人としての藤堂先生の悲しみが滲(にじ)みます。さらに、一家で夜逃げした鉄男に名刺を渡し、後に鉄男が勤めることになる新聞社を紹介してくれていたのも、やはり彼でした。
そして、唯一、藤堂先生との関係性があまり見えなかったのが久志でしたが、第62話に来て意外な事実がわかります。久志がもともと音楽に興味がなかったことも驚きですが、裕福で何の苦労もなく育ったように見えた彼が、両親の離婚で再婚相手を受け入れられず苦悩していたこと。さらに、産みの母に会いに行き、すでに幸せな家庭を築いていた様子を見てショックを受けたときに、「ふるさと」を歌おうと誘い、「いい声してるよ」と声をかけてくれたことが音楽の道に進むきっかけだったことが語られたのでした。