その日はSNSでも告知してイベントに参加したので、ネットでの知り合いもたくさん会いに来てくれました。
「でも、囲んで写真を撮る人の中に、小首をかしげながら小さな声で『
詐欺乙すぎる』『
期待はずれだったわ』などと吐き捨てていなくなる人たちがいて……。その後すぐSNSをブロックされた人もいたし、後々になって
コスプレ系の掲示板で無加工写真を晒されたりもしてしまって。なんて冷たい現実なんだろうって絶望しました」
SNSには自撮りやコスプレをアップする界隈がありますが、それを叩くためにあえて見にいくような人もいます。そんな好奇の目に晒されて、一度はコスプレをやめようかと思ったこともあったそうです。
「知り合いに晒されたことがトラウマで、一度はアカウントを消しました。でも、ネットでばかり生きてきたから、一人でいるのは寂しくて、また宅コスのアカウントを始めて」
わざとアゴを骨折しようと、ビルから飛び降りたことも
「ネットで晒されてからはまた、整形手術を考えるようになったけど……やっぱり田舎のOLに出せる額じゃないし、親になんて説明すればいいかも分からない。一度は悩みに悩んで、
アゴを骨折したりしたら、整形手術が保険適応になるんじゃないかと思って、ビルから飛び降りてみたこともありました。結局その時は、脚を骨折しただけ。
叩いたら折れたり、凹んだりしないかなと思って、今でも毎日寝る前に20回くらいアゴを殴ります。まだ私のアゴは長いままだし、
コロナがあってもなくても、私は人前では一生マスクが取れません」
1日20回、1年で7300回も自分のアゴを殴り続けているという松田さん。彼女はこのまま一生、自分のコンプレックスに飲まれたままなのでしょうか――。
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私のコンプレックス―
<取材・文/ミクニシオリ イラスト/とあるアラ子>
ミクニシオリ
1992年生まれ・フリーライター。ファッション誌編集に携わったのち、2017年からライター・編集者として独立。週刊誌やWEBメディアに恋愛考察記事を寄稿しながら、一般人取材も多く行うノンフィクションライター。ナイトワークや貧困に関する取材も多く行っている。自身のSNSでは恋愛・性愛に関するカウンセリングも行う。Twitter:
@oohrin