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お姫様ではなく、かっこいい鬼婆になりたい2人の女性の物語/『ババヤガの夜』

お姫様ではなくて強くてかっこいい鬼婆になりたかった

 この作品の重要なファクターとなるのが、新道が小さい頃祖母に語ってもらった鬼婆の話だ。  いいことも悪いこともして、人間から恐れられたり感謝されたりする鬼婆。新道が、お姫様ではなくて強くてかっこいい鬼婆になりたかったという話をすると、尚子がそれに同意する。  新道にきつく当たり蔑(さげす)んでいた尚子が、初めて本音を吐いた瞬間であり、後に2人の鬼婆が生まれるきっかけとなる大切なシーンだ。  新道と尚子の間には、愛情も友情もない。  しかし、「誰かの何かとして生きたくない」という強い意志で結びついている。  お互いへと敬意と信頼を保ちながら、長い年月をかけて鬼婆へと変貌を遂げていくその姿は、まさしくシスターフッドと呼ぶに相応しい。 鬼の能面

作中の仕掛けに脳内審判が「一本!!」と勢いよく旗を上げた

 この作品にはとある仕掛けがあり、ネタバレ厳禁となっている。  これから読む方は、その仕掛けに気づいた時、読み進めていたページを戻すことになるだろう。私は「こんなところからすでに王谷晶の術中にハマっていたのか!」と悔しく思い、脳内審判が「一本!!」と勢いよく旗を上げた。心地よい敗北を味わった気分だった。  読了後、仕掛けを意識しながらもう一度読み直すと、そこここに散りばめられたヒントやミスリードに気づいて、より「してやられた!」感を楽しめるだろう。
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いつまでも熱が胸に残る、静謐なラストシーン
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