「鬼上司は5つ年下の男子(現・夫)に入れあげて、押しに押して押しきって付き合ったみたいです」
みのりさんの口から繰り返される「押し」という言葉の回数に、鬼上司の執念を感じます。
「そこから数年かけて、これまた押しきって結婚したらしいのですが、案の定夫は浮気三昧です。しかも社内の若い女子にばかり手をつけるんです」

彼女は続けます。
「社内不倫は地獄ですよ。鬼上司が夫の不倫相手を他部署に異動させたり、仕事でこてんぱんに痛めつける姿を何度も目撃してきました」
さらに話は続きます。
「仕事で成果もあげていて、社内での地位もあったので鬼上司のやりたい放題でしたね」
鬼上司の怒りの矛先は不倫相手ではなく夫に向けるべきなのでは、と思ってしまいます。

「突き出たお腹を抱えて社内を歩きながら、夫を監視しているときの上司の顔は夜叉(やしゃ)そのものでした。その顔を見ていたら、同性としてなんだか切なくもなってきたんです」
みのりさんは言います。
「夫とうまくいっていたり、自分に余裕があれば部下をあんなに追い詰めたりヒステリックになることもなかったんだろうな、と今更ながら感じました」
先日、鬼上司は無事に女児を出産したといいます。
「この様子だと産後もすぐに会社に来て、監視が始まるでしょうね。鬼上司の夫をつかまえて『なにをしているんだ!』と説教したくなる衝動にかられます。不倫はともかくとして『せめて社内で手を出すな!』と」
社内不倫は当事者以外に、まわりにもとんだ影響をおよぼすようです。
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<TEXT/瀧戸詠未 イラスト/鈴木詩子>