タヌくんは保護して3日後には、おうちでご飯を食べ、トイレもするようになりました。

しかし、人馴れはまったくせず、昼夜問わず、大音量で鳴きつづけました。
「外にいるトトと呼び合っていたんです。タヌを保護した後、数匹のオス猫が家の周りをうろつくようになったので、外の様子を心配していました。ストレスで毛を掻きむしり、食べているのに痩せてきて……」
そして2ヶ月後、タヌくんは器用に窓を開け、脱走。トトちゃんと再会を果たし、翌日から、またぴっぷーさん宅にご飯をもらいにくるようになりました。

一方、トトちゃんはタヌくんのいない間に他のオス猫の子を妊娠。子猫が生まれると、タヌくんは自分の子ではないのに甲斐甲斐しくお世話するようになりました。

「一家は、うちのガレージをエサ場・寝床として使っていました。トトがパトロール中は、タヌが子守り。仲睦まじい姿を見て、今度こそ全員保護したいと強く思いました」
そんな時、タヌくんの脱毛を発見。それは、縄張りに入ってきたオス猫をエサ場から追い出そうとしてできたものでした。

そんなある日、激しい喧嘩の声を耳にしたぴっぷーさんは庭へ。そこで見たのはご飯の皿、段ボールハウスがある場所や妻子を守るようにして、オス猫と対峙するタヌくんの姿でした。
「タヌは背後に守るものがあるので逃げることができないし、負けるわけにもいきません。立ち位置を変えず、相手に向かっていきました」
その姿に心打たれ、ぴっぷーさんは加勢。オス猫を追い払いました。
「自分より体格が大きい相手と何度も取っ組み合いをし、タヌはボロボロでした。けれど、決して背中を見せずに戦い続けた。あの姿を思い出すと、今でも涙が出ます。タヌは、漢の中の漢でした」

その後、ようやく一家の保護に成功。それは、初めてトトちゃんを見かけてから1年半後のことでした。
「我が家は先住猫2匹とタヌ、トト、4匹の子猫たちという大所帯になりました。タヌとトトは猫エイズ陽性でした。4匹の子猫は2匹を里子に出し、エイズキャリアの2匹がうちの子になりました」