「初めてといってもいいくらい親しくなった女友だちの家に泊めてもらうことになりました。暴力のことは言えなかったけど、過去を少し話したら、彼女の両親がいたく同情してくれて。お父さんが不動産会社を経営しているので、会社がもっているアパートを使っていいよと言ってくれたんです」

勉強最優先でアルバイトにも精を出し、自力で生活した。優秀な成績で大学を卒業し、就職した。そこまではなんとかがんばり通せたという。
「就職した会社の上司がけっこうワンマンな人で、ときどき怒鳴るんですよ。その怒鳴り声で、私は体が固まってしまう。
社会人になってから、一気に過去のトラウマが噴きだしてきたんです」
慰め、励ましてくれた同期の彼とつきあうようになったが、彼女はどうやってつきあったらいいかもわからなかった。彼の言いなりになりながらつきあって半年ほどたったところで、イラついた彼に、彼の家で殴られた。
「そのとき、私、ものすごくうれしくなったんです。ああ、彼は私に本気なんだって。今思えばおかしいのはわかる。でもあのときは、
そうやって深く濃く関わってくれるのが愛情なんだと思い込んでいた」
最初は数ヶ月に1度だった暴力が、月に1度になり、週に1度になった。それでも彼女は、愛が深くなっていくと信じていたという。