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永山瑛太が弟・絢斗の「逮捕時コメント」で見せた凄み。あの“生々しさ”は最新作でも

“静かなるリアル”を秘めた俳優

映画『怪物』公式サイトより

映画『怪物』公式サイトより

 どれだけナチュラルだとしても演じている以上、演技は嘘が前提となる。にもかかわらず、永山の演技はリアル以外に形容できない。  弟の逮捕が嘘であってくれと祈ったファンにとっては、このコメント映像が冷静に真実を受け止めよと迫るかのように映る。何気ない日常の中で現実そのものを突きつけてくるような凄みある佇まいを感じた。 “静かなるリアル”を秘めた俳優とでもいうのか。最近の彼はそうした特性をより洗練させている。  例えば、是枝裕和監督作『怪物』(2023年)。第76回カンヌ国際映画祭で坂元裕二(『Living』の脚本家!)が脚本賞を受賞しただけあって、物語とキャラクターの織り込み方が計算し尽くされている。  永山が扮するのは小学校の教師・保利道敏。冒頭からなんだかとてつもなくアホな先生が出てきたなと思ったが、そのあとの展開で驚く。内容の詳述はさけるが、わずかな表情ひとつで観客を揺さぶる演技には舌を巻く。

『あなたがしてくれなくても』での名演

フジテレビ『あなたがしてくれなくても』公式ページより

フジテレビ『あなたがしてくれなくても』公式ページより

 そしてセックスレス夫婦の夫を演じた『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系、毎週木曜日よる10時放送)。  妻である吉野みち(奈緒)に対して陽一(永山瑛太)は、まるで子どものように都合よく振る舞い続ける。彼の体たらくが最高の演技をにじませた。みちの心がどんどん離れていくあたりから永山の表情がさらに覚醒する。  基本はオフビートな雰囲気で一見変化はないが、表情のグラデーションはより深く、豊かになっている。例えば、第7話で距離を取るためにホテルに泊まるみちが一時帰宅する場面。  荷物を取ってそそくさと出ていく彼女にろくに言葉がでず、玄関のドアが開いた拍子に外光が陽一の顔を一瞬照らし、無の表情を生々しく浮き上がらせた。  全編を通じ、だらしない最低夫が改心する過程を微妙な違いをつけながら繊細に演じ込む。永山特有のナチュラルとリアルが見事に調和した屈指の名演だ。  陽一役を演じたから弟へのコメントでもあんな表情ができたのか。それとも逆か。いずれにしろ永山瑛太は絶対すごい俳優だ。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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