
それから、半年後のことです。弘行さんはある大きなプロジェクトを成し遂げました。そのご褒美に、リフレッシュ休暇を取得し、念願だった夫婦の初海外旅行にいくことにしました。行き先は南半球の楽園のフィジーです。
人の少ない午前便を選んで出国。もちろん、美希さんは何事もなく出国審査をスルーします。次は弘行さんの番ですが、職員はなかなか彼を通してくれません。それどころか、弘行さんのパスポートを凝視したり、しきりに首をかしげたりしています。
「そのときになって、ふと半年前のことが頭をよぎりました」
もしやと大量の冷や汗が背中を濡らします。その悪い予想はもちろん大当たり。

鋭い目つきでそこで待っているように言い渡され、職員が内線でなにやら指示しています。まもなく別の係官が到着し、別室に連れて行かれました。
そして、係官から一言。
「
これ、書き換えましたね」と言い渡されます。
すべてを知った美希さんの怒りは当然収まりませんでした。その後しばらくの間、家庭生活は彼にとっては針のむしろでした。