そしてそのおじさんの嫌な態度と悪臭のせいで、穏やかだった店内の雰囲気が一瞬にして地獄のようになってしまったことに結衣さんは衝撃を受けました。
「『これっていきなり通り魔に遭って理不尽な暴力を振るわれたようなものだな』と結衣は感じ、面倒だからという理由だけで入浴をおろそかにしていた自分を恥じて、その瞬間から心を入れ替えようと決心したみたいなんです」

結衣さんは「もし私が1週間お風呂に入らなくても、あのおじさんのように臭くなることはまずないけど……
誰かにあんな思いをさせるぐらいなら、お風呂に入る手間ぐらいどうってことない」と思えるようになったそう。
「よっぽど咲子ちゃんとの楽しい時間を水の泡にされてしまったことがショックだったようです。ですが“人のふり見て我がふり直せ”じゃないですが、そのショックが結衣の身になって悪い習慣をやめることができて本当によかったなと思いましたね」
今では、臭いおじさんのせいでかき氷を完食できなくて店を飛び出してしまったことも、結衣さんと咲子さんの間では笑い話になっているそうです。
続いても、苦手を克服したお子さんのエピソードです。
主婦の河北志乃さん(仮名・35歳)の息子、誠也くん(仮名)は9歳の小学生。志乃さんは、誠也くんのにんじん嫌いが気になっていました。

「カレーやシチューに入っているにんじんは全て残しますし、煮物のにんじんには手をつけてくれません。別ににんじんを食べなくても他の食べ物で栄養を摂ればいいし、たいした問題もないのかもしれませんが……。私自身が好き嫌いなく何でも美味しくいただくタイプなので、誠也にいつも『にんじんも食べてみたら?』と声をかけるようにしているんですよ」
ですが誠也くんは「にんじんはまずい」と決めつけて、志乃さんがいくら勧めても聞く耳を持ってくれません。
「ですがそんなある日、仲良しのママ友とその娘さんの美希ちゃん(仮名・8歳)とファミレスに行きました。ハンバーグプレートを頼んだ誠也が、にんじんのグラッセをいつも通り残そうとしたので『
美希ちゃんはにんじんも美味しそうに平らげて、残さずキレイに食べ切ったよ。どうする?』とヒソヒソ声で言いながら肘でつついてみたんです」