大河ドラマ『光る君へ』第33回(C)NHK(以下、同じ)
物語を書く力が認められて、仕事を得ることとなったまひろ。彰子の藤壺に上がることになる。
家柄などを吹っ飛ばし、自分の力だけで職を得られたのはこの時代において、とてつもないことだろう。
しかし、まひろに藤壺での生活が合うのかも気になるところだ。
中宮・藤原彰子(見上愛)に仕えることとなったまひろ(吉高由里子)。物語を書くための部屋が用意され、必要なものも揃っている。藤原道長(柄本佑)と北の方である倫子(黒木華)が準備をした、と言うが、道長ではないだろうか。硯に月の模様があったりと、道長の気配をつい、感じてしまう。
準備は万端。早速、執筆に集中……といきたいところだが、うまくいかない。
彰子の身の回りの世話などで、女房たちが慌ただしく働いている中で、なかなか集中できるはずがないのだ。そしておそらく、女房たちからすると、「物語を書くだけのお役目ってなに……?」となるのではないだろうか。その視線も、痛い。
そうなると、まひろだって手伝うしかない。昼間に働けば、書くのは夜になる。深夜まで書いて、床につくが女房の局はほかの者たちの寝言などでなかなかに賑やかだ。これでは寝付けない、休めない。物語を書く場所としては、決していい環境ではない。
まひろは道長に、家に帰って書きたい、と申し出る。しかし、道長は断固としてそれを許さない。一条天皇(塩野瑛久)はまひろに興味を持ってくる。まひろと会うために中宮のもとを訪れるかもしれない、と希望を託しているのだ。いわゆるおとりなのだが、そのおとりが帰ってしまっては道長としてはどうしようもない。
しかし、まひろは頑なだ。物語の構想自体は、もう頭の中にある。が、環境のせいで捗らない。
「物語は書きたい気持ちの時に書かねば勢いを失います」
ごもっとも……とテレビの前でどれだけの人が頷いただろうか。
道長は必死でまひろを止めるが、きっとまひろが聞き入れないことも分かっていたのだろう。渋々、まひろが家に帰ることを許す。たった8日しかいることができなかった。
仕方ないよ、書けないって言っているんだから……とつい心の中で道長を慰めずにはいられない。
一条天皇のお渡りがないことも悩みではあろうが、彰子の気持ちが見えないところも道長としては悩ましいだろう。何を欲していて、何が嫌なのかもわからない。ただ、最近、少しずつその心が垣間見えるようにはなっていた。
そんな彰子の本当の姿にまひろは気づき始める。こっそりと敦康親王(池田旭陽)にお菓子を渡してあげたり、まひろに「本当は空のような青色が好き」と言ってみたり。
大人になっていく中で、自我が大きくなっていったのか、ようやく彰子の中に何かしらの欲求が生まれたのか。
そのうちのひとつは間違いなく、一条天皇に対する思いだろう。一条天皇といるときや、話題が出ると少し表情が変わる。
まひろが物語のあらすじを話して聞かせると、主人公の「美しく賢く、笛の名手である皇子」のことを「帝みたい」とどこか嬉しそうに言う。何かに触れたときに思い出す人がいるのだとしたら、その人は自分にとって大事な人であることは間違いない。そのことに、彰子は気がついているのだろうか。