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世界名作アニメ6白雪姫 [DVD] (株式会社メディアリンクス)
その他でも、個人的には「アニメと違うところ」も楽しめたのだが、アニメのファンにとっては、やはりそちらを否定しているとも捉えられかねない、嫌われる理由になってしまっているのも現状だろう。その筆頭は「白雪姫の運命の人」とされる「ジョナサン」のキャラクターで、劇中で彼のことを「白馬の王子様ではない」とも言っている。それに伴って、アニメの冒頭で印象的だった「いつか王子様が」が歌われることもなくなっている。
あるいは、白雪姫の性格が能動的または好戦的になっていることはともかく、劇中でその性格と展開の整合性が取れていないことが気になった。たとえば、『白雪姫』の物語で特に印象的な「毒リンゴを食べる」という展開において、その心理に至るまでの理由は少しだけ語られてはいるものの、それでも「この性格の白雪姫があそこまで怪しい老婆のリンゴを食べるだろうか?」と思ってしまった。
クライマックスの展開とメッセージ自体は良かったのだが、それに至る過程の説得力と、その場所にいるキャラクターとの関係性の積み重ねがはっきりと欠けている。急にスケールが小さく思えてしまうし、盛り上がりのなさを感じる人がいるのも致し方がないし、そもそもアニメとはまったく違う展開を嫌う人もいるだろう。
他にも大小さまざまなツッコミどころがあるし、せっかくの実写リメイクで説得力を持たせられたはずの「なぜそうなるのか」のロジックを放棄しているような場面も気になった。そして、どうしても個人的に許容できなかったのは、肝心のラストシーンだった。
ネタバレになるので詳細は控えるが、昨今のディズニー作品で掲げていた「多様性」の「真逆」を行くような、もはやディストピアのようにさえ思える、あの光景はいかがなものだろうか。最後の最後で、決して少なくない人に居心地の悪さを感じさせてしまうのは、もったいなさすぎた。
振り返って思えたのは、今回の『白雪姫』は「原作をなぞった展開」と「今の時代ならではのアップデート」がうまく噛み合っておらず、その一部がアニメへの否定にも捉えられかねない上に、全体的な物語の整合性を損ねてしまっている、ということだ。
過去の実写版『シンデレラ』や『アラジン』は、「原作を大いにリスペクトし新たな解釈を加える」方向性であったと思うし、好評を得ていたのだから、もっとブラッシュアップが必要だったのではないか。
個人的には実写版『白雪姫』はトータルでは決して嫌いにはなれないのだが、やはり「なんだかなあ」と思う部分は多々あるし、アニメのファンから激烈な酷評が届く理由もまた納得できてしまう。
とはいえ、『白雪姫』に思い入れがない、知らないという人にとっては面白く観られる可能性は大いにあるし、何より楽しい場面が多いので素直にお子さんにもおすすめできる。
一緒に観た人と、文句やツッコミも含めて語り合うことも込みで、ぜひ楽しんでみてはいかがだろうか。
<文/ヒナタカ>
ヒナタカ
WEB媒体「All About ニュース」「ねとらぼ」「CINEMAS+」、紙媒体『月刊総務』などで記事を執筆中の映画ライター。Xアカウント:
@HinatakaJeF