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子どもに「まずい食事」出す指導も。炎上した不登校支援サービス、利用した親が明かす“驚きの実態”。医師も問題視。代表を直撃すると

 2023年度の文部科学省の全国調査によれば、小中学校において30日以上欠席した不登校状態にある子どもの数は34万6482人と過去最多を記録した。統計史上初めて30万人を超え、在籍児童生徒に占める割合は3.7%に上る。
スダチの公式サイト トップページ

スダチの公式サイト トップページ(2025年8月8日現在)

 文部科学省は、「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」の中で不登校について「多様な要因・背景により、結果として不登校状態になっているということであり、その行為を問題行動と判断してはならない」としている。  またその支援については「登校するという結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある」と明記しており、休養や自己理解のための時間としての不登校も肯定的に捉えている。  そうした中で、「不登校を平均3週間で解決する」といったキャッチコピー(当時※1)を掲げて注目を集めた不登校支援業者「スダチ」は、ネット広告や検索結果などで頻繁に見かける存在となり、実際に利用する家庭も少なくない。  2024年夏には、東京都板橋区との連携が一時発表され、板橋区の教育委員会も試行的な導入を認めたが、「無理な再登校の促しはリスクが大きい」などの批判が相次いだ。すると一転、区教委が連携を否定。連携が白紙となる事態となった。  本記事では、こうした背景と、民間による不登校支援の実情について理解を深めることを目的に、スダチを一例として、元利用者の声や専門家の見解をもとに課題を考察する。また記事後半では、スダチの代表・小川涼太郎氏への取材内容を掲載する。 【過去記事】⇒「不登校を3週間で解決」うたう民間業者に医師が警鐘。運営元の代表を直撃すると“まさかの返答” ※1…現在、公式サイトのトップには「学校に行こうかなを2ヶ月間で 子どもが自ら再登校するためのサポート」と掲載。 ※本記事では、登場する体験者のプライバシー保護のため、名前はすべて仮名とし、特定を避ける目的で一部の背景や状況を変更しています。

中学生の息子が不登校になりスダチを利用

 2023年に中学生の息子が不登校だった秋元さん(仮名)は、公的支援につながりづらい状況が続いていた。  自治体が運営する教育支援センターでは面談予約が1か月以上先からしか取れず、医療機関の受診や民間の心理士によるカウンセリングも子どもが行きたがらない。スクールカウンセラーへの相談も、同級生や担任の目を気にする子どもが抵抗したため叶わずにいた。  途方に暮れていた最中、ネット上で『平均3週間で再登校率90%以上』(2023年当時)を謳うスダチに辿り着いた。話を聞いてみると、子どもには接触せず、親に対し完全オンラインでアプローチを行うとのことで、取り組むハードルも低く感じたという。すがるような思いで、約5万円の有料診断を申し込み、その後、約40万円を支払って本契約を結んだ。  スダチからは家庭内の「ルール」を発表するように指示があった。ルールの内容は「起床と就寝時間を決める」「朝(夜)、家族と一緒にご飯を食べる」「使った食器は自分で片付ける」「(これらのルールを守れておらず、朝から放課後まで学校に行けない場合)すべてのデジタル機器や漫画、本、娯楽を禁止」といったものだ。

娯楽を制限し、家の中を「つまらない状態」にするよう指導

悩む男性

※イメージです

 上記の中でも、特に徹底を求められたのがデジタル機器の使用制限だ。ゲームやスマートフォン、パソコン、テレビなどすべて撤去するよう伝えられた(勉強のために使う場合は親の監視下でのみ使用可)。  スダチが利用者へ提供した説明用資料には「子どもの不登校が長引く大きな原因は、ゲーム、ネット、スマホ依存」「治さないと不登校は解決しません」とあり、解決方法としては「答えはシンプル。使わせない」とある。また注釈として「※不登校の子どもが家で充実できる環境を作ってはいけない(昔、不登校が現代より少なかったのは、家に居てもすることがなかったから)」とあった。 「欠席していた期間に関しては、娯楽はレゴや工作なども含め、とにかく暇を潰せるものは取り除き、家の中がつまらない状態にするよう忠告がありました。現実的にすべて取り上げるのは不可能で、かなり厳格なルールだと感じましたが、支払いを済ませていたので後に引けないと思い実行しました。 一方で、ボードゲームやカードゲーム、学園モノのドラマなど、家族で一緒に楽しむ娯楽は推奨されていました。目的は家族との関係修復や、学校についての認識を作品を通して考え直すことでした。実際に、こうした親子で娯楽を楽しめる家庭があるのも事実であり、その場合はお子さんの状況が改善していたケースもあるのではないかと思います」(秋元さん)

「主導権は親が握ること」「毅然とした態度」を求められる

 デジタル機器を撤去すれば当然、子どもからの反発が予想されるが、秋元さんは「毅然とした態度」を貫くよう求められた。  説明用資料には、「正しい親子関係を築く」ために必要なこととして「愛情は愛情、躾は躾。愛情と甘やかしを混同しない」「主導権は親が握ること」「毅然とした態度で親の本気度を伝える」などとあり、「家庭の中のボスは親」といった記載もあった。  また、上記のルールを子どもに発表する前に、突発的な行動を防ぐために「包丁を隠しておく」「窓の鍵のロックをかけておく」「靴を隠しておく」等の準備を勧められたという他の親の証言も確認できた。  それからは平日のうち4日間、メールでのサポートが行われた。ルールを守れているかの確認や、子どもの反発や暴力行為の有無、プログラムを遂行するうえでの疑問点などを報告し、それに対してスダチから助言が返ってくる流れだ。
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朝起きてこなければ「まずい食事」を出すアドバイスも
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